はじめに
こんにちは!DMM VR labのパトリックです。
DMM.comのVR研究部門として2018年12月に立ち上がったDMM VR lab、xR領域における既存事業支援・新規事業創出のプロトタイピングと情報収集をミッションとしています。具体的には、VR動画の6DoF化や人体モデルのリアルタイム3Dキャプチャなど、既存事業と親和性の高い領域の技術調査に加えて、マルチプレイヤーVR空間の基盤検証や、VRサービスにおけるユーザー体験の検証などを行っています。
今回は、DMM VR labのリサーチャーとしてサンフランシスコにて3月18日から5日間開催された世界最大のゲーム開発者のカンファレンス『GDC 2019』と、同時開催であるVR開発者のための『VRDC』に参加してきましたので、そのレポートをご覧ください。また、続けて世界最大のVR学会IEEE VR 2019 Osakaにも参加してきましたので、そちらも追ってレポートします。
参加目的
DMMでは2016年よりVR動画のサービスを開始し、順調に売り上げを伸ばしています。一方で、VR業界そのものでも新しいハードウェアが登場し、さらに様々な業界で応用が始まっていることから、VRのポテンシャルをさらに引き出すための専門チームとしてDMM VR labは活動しています。
DMM VR labとして初めての国際カンファレンスである今回の視察の主目的は、グローバルスケールで活躍する開発者と情報交換しながら、今後の業界の動向を探り、知見を持ち帰ることでした。Twitterなどでリアルタイムで情報が手に入る時代ではあるものの、現地の空気を肌で感じながら、世界中から集まる開発者と直にコミュニケーションを取ることで初めて見える日本のVR業界・文化の特徴や、世界のトレンドを踏まえた今後のDMMのVR戦略について改めて考える良い機会となりました。
Google StadiaとOculus Rift S
さて、今回のGDCで注目されていたのは、何といってもクラウドゲーミングだったかと思います。期待どおり、Google からStadiaというゲーミングプラットフォームが発表されました。StadiaはGoogleの音声アシスタントやYoutubeとも強く連携し、同じ端末でシームレスにユーザーが気軽にゲームを遊べるようになることを重視しています。今まではコンソールとPC、スマートフォンそれぞれ棲み分けがされていたゲームタイトルやジャンルも、クラウドゲーミングの普及によって端末の垣根がなくなり、ユーザーのゲーミングライフスタイルが自体が変わるのではないかとワクワクします。
実際に会場でStadiaでアサシンクリードオデッセイを体験することができました。
期待が高まる一方で、やはり多少のラグはどうしてもあるようで、VRゲームやFPSといったようなレイテンシが重視されるコンテンツジャンルではクラウドゲーミングはもう少し待つことになるのではないかと感じました。GoogleのVRプラットフォームであるDaydreamへのStadiaの対応については今回は言及がありませんでしたが、VRプラットフォームとしてはかなり強力な一手になる予感がします。Stadiaのデモのスタッフに尋ねたところ、Stadiaの続報は今年の後半だと教えてもらえたので、そこで何かしらの言及があることを期待しています。日本での展開についても未定で、価格や対応ソフトについてもまだ言及はありませんでしたが、ここ数年におけるクラウドゲーミングの流れにおいてはマスユーザーの手に届く期待が最も持てるニュースでした。今後が楽しみです。
Oculus Rift Sを体験する様子。10分のデモのために2時間以上並びました。
Facebook傘下のOculusからは、両手コントローラ―付きスタンドアローン型6DoF VR端末としては業界初となるOculus Questの発売と同時期に、Oculus Riftの後継機にあたるOculus Rift Sを発売すると発表がありました。Rift SはQuest同様、外部センサーが不要なインサイドアウト方式のPCVRで、動作にはOculus Riftと同等のPCスペックを要求します。外部センサー以外の部分のアップデートとしては、ディスプレイ解像度が1440pとアップグレードされ、またオーディオ方式はOculus GOを踏襲した内部埋め込み式になっています。ある程度順当な進化を続けており、インパクトの大きなニュースとまでは言えませんが、実際に体験させてもらったところとても快適で、センサーが減るだけでも十分に欲しくなるデバイスでした。
GDC/VRDCセッションやイベント
GDC/VRDCでは、エキスポの他にセッションやカンファレンス、同時開催イベントが行われました。そのなかから興味深かったものを紹介いたします。
1つ目はSquare EnixのAIエンジニアGautier Boedaさんによる「NPCs Have Feelings Too: Verbal Interactions with Emotional Character AI」と「Enhanced Immersivity: Using Speech Recognition for More Natural Player AI Interactions」の2つのセッション。
VRゲームの中でNPC(ノンプレイヤブルキャラクター)に声で指示を出し、感情を持っているように見せるAIを用いた取り組みについての紹介でした。ゲームシーンの中で、ユーザーは「KOBUN」という宇宙人のようなかわいらしいNPCに指示を出します。非常に優れているのは、この時ユーザーが出す指示を言語やユーザーの語彙に縛られずに処理することができる点です。詳しくまとめられている記事が4Gamersさんから出ていたので、気になる方は参照してみてください。
[GDC 2019]「左の敵を足止めしてくれ」と,ゲーム内のキャラクターに音声で命令できるようになる? スクエニが自然言語コミュニケーションの将来像を語る - 4Gamer.net
AIの活用により、より自然にインタラクションが取れるNPCが作れるようになれば、将来的には動いているキャラクターがプレイヤーなのか人間なのかわからないといったことも起こる、そんな可能性を感じました。
2つ目はMagic LeapのテクニカルサウンドデザイナーBrett Shipesさんによる「Every Sound in the Universe: New Frontiers for Audio」のセッション。ここでは大きく話題になったARグラスMagic Leap oneのサウンドデザインでも活用した、VR/ARにおけるサウンドデザインの大きな二本の柱である「スペ―シャルオーディオ」「プロシージャルオーディオ」について解説がありました。スペ―シャルオーディオを用いると、空間上のどこからどう音が聞こえるかを設計することで、より音に説得力を持たせ没入感を高めることができます。プロシージャルオーディオははユーザーのインタラクションに起因するような「叩く音」などについて、同じ「叩く音」でも叩き方、角度、叩いた位置などで毎回違った音に聞こえるよう、音を自動生成するプログラムを組むという考え方をします。ユーザーが「実際にそこにいる」ようにより強く感じさせるためにゲーム開発者・VR/AR開発者は開発の初期段階からオーディオのユーザー体験を意識することが大事です。
最後にもうひとつ、3日目の夜に行われたSVVR主催のVR mixerというイベントでは、様々なVR系企業のエンジニアやデザイナー、マーケターが集まり交流を持てました。
VRMixer.com is for sale|inside.dmm.com
場所はTemple SFというGDCの会場から2ブロックほど先のナイトクラブです。かなりイケイケなナイトクラブでしたが、集まっている方は真面目にVRに取り組んでいる方ばかりでした。
奥のモニターではVRchatのどこかのワールドと繋がっていました
ちょうどVR labでIntel Realsenseを使ったテレイグジスタンスのデモを作っているタイミングだったのですが、まさにその開発者チームの一人であるPhillip Kregnovさんにも会うことができました。ポイントクラウドの位置合わせに苦労しているというこちらの話をしたら快くアドバイスをいただき、また、ご自身が取り組んでいるディープラーニングの教師データ作成メソッドを紹介していただきました。かなり興味深い内容なのでこちらも紹介します。
Meetup - Deep Learning for VR/AR: Body tracking with Intel® RealSense™ Technology|inside.dmm.com
エキスポ
GDC三日目からはエキスポが開催され、インディーゲームや大手ゲームメーカー、プラットフォーム、開発ツールのブースなど様々な展示がありました。
まとめ
世界最大のゲーム開発者カンファレンスというだけあって、とにかく熱量と勢いを感じるイベントでした。
VRの確実な立ち上がりも肌で感じることができ、また世界中の開発者の視線やマインドもしっかりと感じ取ることができました。DMMとして今後どんなVRサービスが展開できるのか、GDCの経験を踏まえてしっかり取り組んでいきたいと思います。10月にはXRDCが開催されるので、チーム一同で参加したいです!
Game Developers Conference (GDC)|inside.dmm.com
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