<h2 id="はじめに">はじめに</h2>

<p>こんにちは！動画配信事業部に所属するエンジニアの杜志剛(<a href="https://qiita.com/dulao5" target="_blank">@dulao5</a>)です。</p>

<p>弊社は20年間成長し続けるサービスを持っている一方、技術負債も十分に溜まりました。この現状に対し、DevOpsやSREやクラウド化など負債脱却の改善策をいろいろと取り込んでいます。</p>

<p>最近「クラウドネイティブ」という言葉がだんだん流行ってきたと思うので、クラウドネイティブにおけるDMMの開発はどうしていくべきかを考えたく、今回は表題のカンファレンスへの参加を決めました。</p>

<h2 id="クラウドネイティブCloudNativeとは">クラウドネイティブ(CloudNative)とは</h2>

<p>下記は CNCF（Cloud Native Computing Foundation） からの定義です：</p>

<blockquote><em>クラウドネイティブ技術は、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドなどの近代的でダイナミックな環境において、スケーラブルなアプリケーションを構築および実行するための能力を組織にもたらします。 このアプローチの代表例に、コンテナ、サービスメッシュ、マイクロサービス、イミューダブルインフラストラクチャ、および宣言型APIがあります。&nbsp; (<strong><a href="https://github.com/cncf/toc/blob/master/DEFINITION.md#%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E7%89%88" target="_blank">CNCF Cloud Native Definition v1.0</a></strong>)</em></blockquote>

<p>この定義は抽象的なので、読んでも具体的なイメージが持てないと思います。こういったやや難解な定義の理解に比重を置くよりは、私自身は「なぜクラウドネイティブか」「何の問題をクラウドネイティブで解決するか」をまず理解したらいいのかなと思い、下記の本を読んで、クラウドネイティブの経緯・目指す問題・解決方法がわかりました。これは 2015年に Pivotal 社がクラウドネイティブの概念をまとめた本です。57ページしかないので、興味がある方はぜひ読んでください。</p>

<blockquote>
<p><iframe frameborder="0" scrolling="no" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fcontent.pivotal.io%2Febooks%2Fmigrating-to-cloud-native-application-architectures" title="Microservices eBook: Migrating to Cloud-Native Application Architectures"></iframe></p>
</blockquote>

<h2 id="KubeCon--CloudNativeCon-Open-Source-Summit-China-2019-ってどんなイベント">KubeCon + CloudNativeCon +&nbsp;Open Source Summit China 2019 ってどんなイベント？</h2>

<p>「KubeCon + CloudNativeCon + Open Source Summit(以下、KubeCon)」は、Linux Foundation傘下の CNCF主催のイベントで年に３回、アジア・ヨーロッパ・アメリカで行われています。このイベントには、クラウドネイティブのエコシステムの開発者、IT専門家、関係会社やOSS組織のリーダーたちが集まって、経験を共有してクラウドネイティブの将来について議論します。今回、6月24日から6月26日にかけて「KubeCon China 2019」が上海で開催されました。3日間での来場者は3,500人以上、共催イベント14回、LT8回、基調講演32回、サブフォーラム252回が開催され、300人以上のスピーカーが参加したそうです。</p>

<h2 id="どんなコンテンツがあるか">どんなコンテンツがあるか</h2>

<p>基調講演やセッションは、下記の主な分野です：</p>

<ul>
	<li>Open Source 周りの話題</li>
	<li>Kubernetesの活用事例、起こった問題と解決方法の紹介</li>
	<li>企業のクラウドネイティブ戦略と実施した経験</li>
	<li>Kubernetesのミドルウェア周り・ CNCF のほかのプロジェクトの紹介と活用事例</li>
</ul>

<p>当日スケージュールとプレゼン資料は<a href="https://www.lfasiallc.com/events/kubecon-cloudnativecon-china-2019/schedule-english/" target="_blank">こちら</a>です（一部セッションは資料が添付されていません）。</p>

<p>すべてのセッションは&nbsp;<a href="https://www.youtube.com/playlist?list=PLj6h78yzYM2Njj5PvNc4Mtcril2YyR95d" target="_blank">Youtube Playlist</a>&nbsp;にあるのでご参照ください。</p>

<p>私が聞いたセッションは30本ほどで、そのなかから気になったものを紹介したいと思います。</p>

<h2 id="Open-Source-周りの話題">Open Source 周りの話題</h2>

<p><iframe allowfullscreen="" frameborder="0" height="270" id="widget2" src="https://www.youtube.com/embed/rcjafFDf1vI?feature=oembed" width="480"></iframe></p>

<p><em>（PDF版は<a href="https://static.sched.com/hosted_files/kccncosschn19eng/cc/Jim%20Zemlin%20June%2025%20English.pdf" target="_blank">こちら</a>です）</em></p>

<p>今回イベントを通してOSSが話題でしたが、代表的なセッションです。OpenSourceは、今の時代に技術革新のための最も重要な要素であるとのことです：</p>

<ol>
	<li>Linuxはソフトウェアの多くの分野に渡って、さらに重要になってきている</li>
	<li>Linux Foundation も技術のエコシステムにおいて重要な部分になっている</li>
	<li>モダンシステムのコードベースで、OpenSourceのコードの割合はもう80%～90%ぐらい、カスタムコードはわずかに10%ぐらい</li>
	<li>最新OSS技術を採用して、製品を作って、OSSに参加するーーというサイクルはOpenSourceの持続可能な価値である</li>
</ol>

<p>特に気になったのが、４番目のOSS技術の採用サイクルについてです。</p>

<blockquote>
<p><img alt="f:id:du-zhigang:20190718134956p:plain" src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/d/du-zhigang/20190718/20190718134956.png" title="f:id:du-zhigang:20190718134956p:plain" /></p>
</blockquote>

<p>&nbsp;</p>

<p>個人的には、サイクルの形になれるポイントは「Participation」にあると感じています。今の時代OSS技術は、エコシステムになっているのでOSSに参加せずに技術を採用するだけでは、自社のOSS技術がOSSコミュニティから離れていってしまい、現在採用している技術が将来的には技術負債になる可能性が高いと思います。そのため、OSSに参加（また貢献）するのはサイクルの中で最も重要だと思います。今回の「KubeCon China 2019」では、まさにこのサイクルのような企業事例をたくさん聞くことができました。</p>

<h2 id="Kubernetesの活用事例起こった問題と解決方法の紹介">Kubernetesの活用事例、起こった問題と解決方法の紹介</h2>

<p>一番気になったのは、アリババのKubernetes活用事例です。アリババのセッションはいくつかありましたが、以下に紹介するのは、まとめセッションです。</p>

<p><iframe allowfullscreen="" frameborder="0" height="270" id="widget4" src="https://www.youtube.com/embed/bA61U-kYPy4?feature=oembed" width="480"></iframe></p>

<p><em>（資料は<a href="https://static.sched.com/hosted_files/kccncosschn19eng/ab/Xiang%20Li%20June%2026%20English.pptx" target="_blank">こちら</a>です。ちなみに、スピーカーのXiang LiはCNCFの<a href="https://www.cncf.io/people/technical-oversight-committee/" target="_blank">Technical Oversight Committee</a>の一員です）</em></p>

<p>アリババのKubernetes Cluster 規模は下記のようです：</p>

<ul>
	<li>Clusters : 約 10 個</li>
	<li>Containers : 100万個</li>
	<li>Nodes : 1万個/1Cluster</li>
</ul>

<p>規模が大きすぎてさまざまな問題があったものの、解決してOSSに貢献できたそうです：</p>

<blockquote>
<ul>
	<li>Prometheus の Scalable が足りない問題
	<ul>
		<li><a href="https://m.youtube.com/watch?v=ZS6zMksfipc&amp;list=PLj6h78yzYM2Njj5PvNc4Mtcril2YyR95d&amp;index=74&amp;t=0s" target="_blank">High Available + Scalable Prometheus with Thanos in Alibaba</a></li>
	</ul>
	</li>
	<li>Pod のリソース管理機能が足りない問題
	<ul>
		<li><a href="https://m.youtube.com/watch?v=8NJ9p-Z1ueY&amp;list=PLj6h78yzYM2Njj5PvNc4Mtcril2YyR95d&amp;index=229&amp;t=0s" target="_blank">Dynamic Pod Resource Boundary Adjustment in Web Scale Clusters</a></li>
		<li><a href="https://github.com/openkruise" target="_blank">https://github.com/openkruise</a>&nbsp;(9月OpenSourceする予定)</li>
	</ul>
	</li>
	<li>Master Node性能が足りない問題
	<ul>
		<li><a href="https://www.youtube.com/watch?v=1ThhTbMO1NE&amp;list=PLj6h78yzYM2Njj5PvNc4Mtcril2YyR95d&amp;index=95" target="_blank">Understanding Scalability and Performance in the Kubernetes Master</a></li>
	</ul>
	</li>
	<li>Docker pull が遅い問題
	<ul>
		<li><a href="https://www.youtube.com/watch?v=h5snJb3V_to&amp;list=PLj6h78yzYM2Njj5PvNc4Mtcril2YyR95d&amp;index=26" target="_blank">Three Approaches to Speed up Image Distribution in Cloud Native Era</a></li>
		<li><a href="https://d7y.io/en-us/" target="_blank">Dragonfly : a P2P based image and file distribution system</a></li>
	</ul>
	</li>
</ul>
</blockquote>

<h2 id="企業のクラウドネイティブ戦略と実施した経験">企業のクラウドネイティブ戦略と実施した経験</h2>

<p>上記のアリババのセッションもこの種類でありますが、続いてはHuaweiのセッションを紹介します。</p>

<p><iframe allowfullscreen="" frameborder="0" height="270" id="widget6" src="https://www.youtube.com/embed/bi0_ATxreUA?feature=oembed" width="480"></iframe></p>

<p><em>(資料は<a href="https://static.sched.com/hosted_files/kccncosschn19eng/83/Alan%20Liao%20June%2026%20English%20UPDATED%20V2.pptx" target="_blank">ここ</a>です)</em></p>

<p>Huawei はクラウドネイティブに対して、主に４つのことを行っています：</p>

<ul>
	<li><a href="https://kubeedge.io/en/" target="_blank">KubeEdge</a>&nbsp;をOSSに貢献させた (AIの学習の部分はクラウドで行って、実行部分はEdgeで行う)</li>
	<li>企業の需要に応じて、Huaweiはマルチクラウドの技術の「K8S-Federation」を開発・運用している（残念だがOpenSourceじゃなさそう）</li>
	<li>KubernetesのARMサポートの対応（今年OSSに貢献する予定）</li>
	<li><a href="https://github.com/volcano-sh/volcano" target="_blank">https://github.com/volcano-sh/volcano</a>&nbsp;: KubernetesのBatchシステムで、AIやビッグデータの対応が優る</li>
</ul>

<h2 id="Kubernetesのミドルウェア周り-CNCF-のほかのプロジェクトの紹介と活用事例">Kubernetesのミドルウェア周り・ CNCF のほかのプロジェクトの紹介と活用事例</h2>

<p>この部分は細かいのですが、いくつか気になるセッションはありました。</p>

<h3 id="Kata-containers-技術の活用事例アリババ">Kata containers 技術の活用事例(アリババ)</h3>

<p><iframe allowfullscreen="" frameborder="0" height="270" id="widget8" src="https://www.youtube.com/embed/ra7aAnuEZw4?feature=oembed" width="480"></iframe></p>

<p><em>(PDF版は<a href="https://static.sched.com/hosted_files/kccncosschn19eng/66/presentation.pdf" target="_blank">こちら</a>です)</em></p>

<p><a href="https://katacontainers.io/" target="_blank">Kata Containers</a>は軽量VMで隔離するcontainer runtimeです。docker runtimeより安全性が高いので、アリババの Serverless サービスはこれを使って構築できたそうです。</p>

<h3 id="gVisor-の紹介">gVisor の紹介</h3>

<p><iframe allowfullscreen="" frameborder="0" height="270" id="widget10" src="https://www.youtube.com/embed/1Ib-rfSzDuM?feature=oembed" width="480"></iframe></p>

<p><em>（資料はないです）</em></p>

<p><a href="https://github.com/google/gvisor" target="_blank">gVisor</a>もcontainer runtimeの一つです。Kataとの違いは、Kataが軽量VMで実現した一方で、gVisorはLinux user spaceにLinux sandboxで実現したものです。</p>

<h3 id="Vitess-の事例">Vitess の事例</h3>

<p><iframe allowfullscreen="" frameborder="0" height="270" id="widget12" src="https://www.youtube.com/embed/qww4UVNG3Io?feature=oembed" width="480"></iframe></p>

<p><em>（PDF 版資料は<a href="https://static.sched.com/hosted_files/kccncosschn19eng/03/Two%20Years%20With%20Vitess-JD.pdf" target="_blank">こちら</a>です）</em></p>

<p>中国のECサイト大手「京東商城（JD.com）」が二年間にVitess を活用した事例紹介です。Vitess とは、MySQLの水平スケーリング クラスタリングツールです。</p>

<h3 id="TiKV--TiDB">TiKV &amp; TiDB</h3>

<p><iframe allowfullscreen="" frameborder="0" height="270" id="widget14" src="https://www.youtube.com/embed/44kHIspniFs?feature=oembed" width="480"></iframe></p>

<p>&nbsp;(PDF版資料は<a href="https://static.sched.com/hosted_files/kccncosschn19eng/70/TiKV%20Best%20Practices.pdf" target="_blank">ここ</a>です)</p>

<p><a href="https://tikv.org/" target="_blank">TiKV</a>&nbsp;は分散型トランザクションKey-Valueデータベースで、 今年5月にCNCFのincubating projectになりました。このセッションでは、TiKV が生まれるまでの経緯とベストプラクティスが紹介されました。</p>

<p><a href="https://github.com/pingcap/tidb" target="_blank">TiDB</a>は分散型<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/NewSQL" target="_blank">NewSQL</a>&nbsp;データベースです(この製品のストレージ層は TiKV です)。特徴はたくさんありますが、私が一番気になる部分は「水平方向の拡張性」と「MySQLとの互換性」です。TiDBを使うと、アプリケーション層にShardingロジックのコードを書く必要がありません。さらにmysql clientを利用するままで水平拡張ができてしまいます。Mysqlリプリケーションプロトコルで、MysqlからTiDBに、TiDBからMysqlに、両方ともリプリケーションできるそうです。</p>

<h2 id="最後に">最後に</h2>

<p>「KubeCon」に参加していろいろと勉強になりました。特にクラウドネイティブ周りの知識や視野が広がりました。これからのDMMの負債脱却の仕事にも、クラウドネイティブの技術を検証して活用していきたいと思います。</p>

<h3 id="採用情報">採用情報</h3>

<p>DMM.comでは共に働くエンジニアを募集しております。 興味のある方は、ぜひ下記募集ページをご確認ください。</p>

<p><iframe frameborder="0" scrolling="no" src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fdmm-corp.com%2Frecruit%2F" title="RECRUIT"></iframe><cite><a href="https://dmm-corp.com/recruit/" target="_blank">dmm-corp.com</a></cite></p>


イベント

KubeCon + CloudNativeCon +  Open Source Summit China 2019 参加レポート

facebook

twitter

DMM TV

DMMブックス

DMM pictures

DMM GAMES

DMMオンクレ

DMMスクラッチ

DMMくじ

DMMオンラインサロン

DMMいろいろレンタル

DMM DVD／CDレンタル

DMM通販

DMMオンラインクリニック

デジタルコミック事業

DMMチャットブースト

DMM英会話

DMMかりゆし水族館

ベルリング

ハッシャダイソーシャル

ヤンキーインターン

シント=トロイデンVV

DMM地方創生

DMM.make AKIBA

DMM.make 3Dプリント

Seamoon Protcol by DM2C Studio

ONE DAY DESIGN

DMM WEBCAMP

DMMぱちタウン

DMM競輪

Algoage

DMM EV CHARGE

DMMポイントクラブ

社会課題

エンターテインメント

動画

電子書籍

アニメ

ゲーム

アプリゲーム

コミュニティ

オンラインサロン

PCゲーム

オンラインイベント

ビジネスソリューション

教育

英会話

水族館

救急車両

消防車両

モノづくり施設

サッカー

スポーツ

地方創生

Web3

研究開発

アプリ

ブロックチェーン

プラットフォーム

横断開発

インフラ

アミューズメント

同人

サーバサイド

バックエンド

フロントエンド

ネットワーク

セキュリティ

配信基盤

ペイメント

Android

データベース

ビッグデータ

フルスタック

データ分析

機械学習

プロトタイピング

グラフィックデザイン

3DCG

モーショングラフィック

プロダクトデザイン

コピーライティング

サービスデザイン

コンテンツ管理・制作

ブランディング

マーケティング

企画

編集

営業

プロモーション

KubeCon + CloudNativeCon + Open Source Summit China 2019 参加レポート

シェア

関連する記事