DMM.comの50を超える事業部が、各自に行っている人材開発に焦点を当てる連載シリーズ「キャリア開発のツボ」。育成の課題や進展をリアルにお届けしていきます。
今回フォーカスしたのは、DMM.com創業の地である石川事業所に籍を置くWEBサイト運営部です。WEBサイト運営部は現在、石川事業所のメンバー全員が“事業の最大化”に向けてパワーを発揮できる環境づくりを目的とするプロジェクト「JANUS(ヤヌス)」の推進を担当しています。
本記事では部長の畦地祥子さんとプロジェクトメンバーである澤田亮太朗さんに、「JANUS」がスタートして以来どのように組織が変化してきたのかを赤裸々に語っていただきました。
目的に向かって、一直線に進むために
まずは、創業の地・石川県に籍を置く、WEBサイト運営部の事業内容についてお伺いさせてください。
畦地:WEBサイト運営部は、LC事業部、物販事業部、レンタル事業部、動画事業部、同人事業部、電子書籍事業部の6事業部の運営と運用を行う部署です。DMM.comの歴史をつくってきた事業を支える部署であり、事業への利益貢献を目的とした高品質かつ安定したサービスの運用と維持をミッションに掲げています。
DMM.comの基盤事業を支える、重要な位置付けにある事業部なんですね。現在事業とは別に、人事組織にフォーカスを当てた「JANUS」というプロジェクトが動いているとお聞きしました。具体的に、どのようなものなのでしょうか。
畦地:「JANUS」は、点在していた5つの事業所を統合して誕生した新たな拠点・石川事業所の創設を契機に発足したプロジェクトです。“事業最大化”を掲げ、それまで独自に運用されたいた制度や業務フローを統一し、より強い組織に変貌することを目的としています。
実はこれまで、事業所が分かれているがゆえの課題に直面することが何度もありました。同じ目的に向かって全力を尽くしているのにもかかわらず、利害が衝突してしまったり、業務が二重になっていたり、会社の成長に一直線で向かえていなかったんです。
またそうした状況なので、メンバーがキャリアビジョンを描きにくく、一人ひとりの業務努力が報われにくい状況になっていました。そこで、事業最大化だけでなく、メンバーがそれぞれのキャリアビジョン達成に向かえる状態を目指そうと決意。
事業部を統括する執行役員の山本(EC&デジタルコンテンツ本部 本部長・山本弘毅)に「畦地はどうしたいの?」と発破をかけられたこともあり、本腰を入れた改革がスタートしました。
プロジェクトメンバーである澤田さんは、これまで組織に課題を感じる機会はあったのでしょうか。
澤田:畦地が「会社の成長に一直線に向かえていなかった」と話したように、自分の業務が本当の意味で事業成長に貢献しているかが分からなくなってしまうことがありました。
事業所が独立していて、なおかつ業務フローも標準化されていなかったので、本来不必要な業務が発生していることもあったと思います。そうした課題感から、自ら挙手して「JANUS」のプロジェクトメンバーに参加しました。
組織と評価、業務と収支の4つを対象に改革を推進していて、僕は業務を最適化するプロジェクトを担当しています。
高い目標を追う、野心的な組織へ
具体的に、どのようなフローで組織改革を行なっているのでしょうか。
澤田:現状の可視化、組織と業務フローの再編成、事業貢献へのアクションという大きく3つのフローで実施しています。現在は3年計画の2年目で、可視化のフェーズが終了したところ。最適化に向けた動き出しをしている真っ最中です。
「JANUS」の運用によって、組織に何か変化が起きていますか。
畦地:石川事業所に所属するほとんどのメンバーが、事業最大化という目的達成に向けたアクションを自発的に取れるようになってきました。自分が所属するグループは何のために存在していて、どうすれば事業の成長に貢献できるのかを問い続けることで、自分の頭で考えて行動する癖がついてきたんです。
野心的な目標にワクワクしながら向かう組織を目指し、目標管理手法にKPIではなくOKR(Objectives and Key Results)を置いたことも、ポジティブな影響が出ている要因だと考えています。以前と比較して、創造的な成果を上げられる組織になってきていると感じますね。
改革に痛みはつきもので、従来のスタイルを変えることにハレーションがあったのではないかと思います。どのようにして乗り越えられたのでしょうか。
畦地:おっしゃる通り、少なからずハレーションがあったのも事実です。組織を再編成しているので、それまでとは異なるポジションに配置されたメンバーもおり、戸惑いがあったと思います。
しかし、プロジェクトの目的と実現後の世界を伝え続けることで理解を得られました。「世の中が変化していくのだから、私たちも変化していかないといけない。痛みを伴うことは避けられないけど、変化していくことで必ずチャンスがやってくる」というメッセージに、多くの社員が賛同してくれたんです。
改革の始動から一年経った今は組織に一体感が生まれ、「JANUS」の完遂、そして“北陸No.1 テックカンパニー”というゴールに全員で挑戦できていると感じます。
2021年に見たい未来
「JANUS」の目的には、「メンバーそれぞれがキャリアビジョンを描ける」があるとお聞きしました。澤田さんは「JANUS」を通じて、将来ありたい姿を見つけることができましたか。
澤田:組織が大きく変化していく過程で、「自分の仕事は何だろう?」と考え込んでしまう時期がありました。一度、軸を見失ってしまったんです。ただ、プロジェクトメンバーとして改革を実践するなかで、領域や内容にかかわらず、自分は問題解決に喜びを感じるのだと知りました。
「JANUS」は事業最大化を目指すプロジェクトでありながら、自分が最も活躍できるポジションを見つけるための取り組みでもあります。やるべきことを整理し、何をするかを考える過程があるので、今後はよりキャリアプランが研ぎ澄まされるのではないかとも期待していますね。
DMM Tech Visionにもつながる話ですが、数字を共通言語に会話する機会が増え、自分がどれくらいの成果を出せていて、どんな課題を持っているのかが正確に把握できるようにもなりました。
それによって努力の方向性を見誤らなくなったと思いますし、モチベーションも向上している。DMM.comは高いモチベーションに対して機会を与えてくれる会社なので、良い循環が生まれてきているのではないかと思いますね。
畦地:澤田が言うように、DMM.comは年次に関係なく意志に対して機会を与える会社です。私はもともと3DCADを扱う技術者を目指していて、DMM.comはアルバイトで少しの間だけ働く予定でした。ただ、どんどん仕事を任せていただき、気づいた頃にはアルバイトのままマネージャーになっていました(笑)。
つまり私のように、アルバイトからでもキャリアをつくることができます。働く場所はもちろん、経歴や年次にかかわらずチャンスが開かれている会社なので、石川事業所からでも事業責任者になれますし、役員が生まれる可能性もあると思っています。
私たちにとって「JANUS」の完遂は、改革の序章にすぎません。ここ石川から事業の中枢を担う人材の輩出に向けて全力で取り組んでいきます。
2021年には、その素地が出来上がっているはず。誰もが見たい未来をつくるDMM.comを支える大黒柱として、今後もますます成長していきます。
構成:オバラ ミツフミ、カメラマン:白崎 吉人