もともとは「DMM TV」のプロジェクトだけだった
すでに「DMMプレミアム」と「DMM TV」は各種メディアでも話題になっています。まず、それぞれどのようなサービスなのか教えてください。
奥野:「DMMプレミアム」は月額550円の新たなサブスク会員システムです。大きな特徴は、今回ローンチしたDMM TVをはじめ、電子書籍やゲーム、グッズ購入、オンラインくじ、オンラインクレーンゲームなど、DMMが提供する多くのエンタメコンテンツをとてもお得に楽しむことができるところ。
そして、そういったコンテンツ中でも大きな目玉として新たにローンチしたのが、動画配信サービスの「DMM TV」です。プレミアム会員であれば自由に見放題対象の動画を視聴することができます。
奥野さんは「DMMプレミアム」の開発領域責任者であり、「DMM TV」のプロジェクトマネージャーでもあります。どのような経緯でプロジェクトに携わることになったんですか?
奥野:私が所属するテックリード室は、本部内で横断的な技術支援を行うことをメインの業務としていました。2020年の5月頃に、当時支援に入っていた動画配信事業部で新たな動画サービスを立ち上げようという話が持ち上がり、テックリード室として参画することになりました。それが後のDMM TVですね。
企画が煮詰まっていくにつれて「せっかくならDMMが展開する様々なサービスを一緒に楽しめるサービスにしたいよね」とアイデアが広がっていき、「DMMプレミアム」という新たなサブスク会員システムを作ることでマルチエンタメ・プラットフォームを目指していこうというプロジェクトになりました。
それが「DMMプレミアム」であり、その主軸となる「DMM TV」と並行して進めていくことになったという経緯です。
プロジェクトへの情熱がメンバーの心を動かした
隣にいるプラットフォーム事業本部(以下、PF事業本部)の若林さんと接点が生まれたのは、この2つのプロジェクトがスタートしてからですか?
奥野:そうですね。特に「DMMプレミアム」は、新たな会員種別に各サービスを紐づける事業横断型のプロジェクトです。私としてはこの話が出てきた時点で「PF事業本部が主役にならないといけないだろうな」というのは思っていました。
若林:PF事業本部は、DMMの各サービス運営に必要となる会員機能や決済機能を開発・管理していますからね。PF事業本部も当然プロジェクトには参画していたのですが「主役」という形ではなかったですね。
それにしても僕をプロジェクトに誘ったときの奥野さんはすごかったですよ。
奥野:一緒にDMM TVを進行しているメンバーから若(若林さんのこと)を紹介してもらいまして。3人でzoomで話しているうちに、これは巻き込まなければ!と思いました。善は急げということで、PF事業本部とCTO(当時PF事業本部の本部長を兼務)の定例会議にお邪魔して「若をプレミアムにください!」とCTOに直訴したんです。
若林:ちょうどその頃の僕はPF事業本部で大きなプロジェクトを進めていて、正直な話、大規模プロジェクトを掛け持ちするのは難しいと思っていました。だから初めて奥野さんから話を聞いたときは「今いる人たちでなんとかしてくれないかな…」って思っていたんです(笑)。
でも、「絶対に成功させたいんだ」という奥野さんの情熱がすごくて、僕も心打たれてしまったというか。CTOの許可も無事に出たので、プラットフォーム領域のプランニングとプロジェクトマネージャーを引き受けることにしました。
奥野:さすがに突然だったのでCTOにはちょっと怒られましたけど、ご快諾いただきまして(笑)。たぶん私が今回のプロジェクトで一番良い仕事をしたのはこの瞬間だった気がします。本当に必要なメンバーは多少無理矢理にでも巻き込んでいくことはリーダーの大事な役割だと思うので。
プロジェクトに立ちはだかった大きな壁
プロジェクトが始まってからは順風満帆だったんですか?
奥野:いえ、正直かなり苦戦しましたね…。特に大変だったのは、まったくのゼロから開発を進めていた「DMM TV」のプロジェクトです。ここまで大規模な新サービス開発は、おそらくDMMでも初めての試み。経験値の差や人的リソースの関係から、リードエンジニアの方々に開発とプロジェクト管理を兼務してもらう状況が続いていて、このままではいよいよ当初のローンチ予定日には間に合わないぞ、、というところまできました。
でも、そんなときに若が彼のチームメンバーを引き連れてDMM TVの支援に入ってくれたんです。
若林:その時点ですでに私が任されていた「DMMプレミアム」のプロジェクトはひと段落ついていました。そこでPF事業本部のプロジェクトマネージャーを集めたPMOチームを新たに組織して、僕がそのチームリーダーとして今度は「DMM TV」の課題解決にあたりました。
特に大きな問題になっていたのが、キーマンの属人化とコミュニケーション設計の不備。キーマンの業務負荷分散のためにPMOを配置したり、メンバーの横のつながりを増やす会議体の再設計を行ったりするなどして改善策を進めていきました。
そんななか奥野さんは「DMM TV」の負荷試験を着実に進めていったそうですね。
奥野:若のPMOチームが支援してくれたおかげで業務に時間を割けるようになったんです。動画サービスは膨大なトラフィックを扱いますので、ユーザーに快適な体験を提供するためにも負荷試験は特に集中して取り組まなければいけません。優秀な開発メンバーたちと一緒に、さまざまなシナリオを検討しては改善を繰り返し、時間の許す限りサービス品質を高めていきました。
若林:かれこれ7年ほどDMMにいますが、ここまで鮮やかで、抜かりのない負荷試験は初めて見ました。他の事業部が管理している機能まできちんと連動させた上で横断的に試験を行っていたんです。しかも完了までのスピードもとにかく早かった。めちゃめちゃ感動しましたね。
“本気の失敗を肯定する”文化が浸透している
今回のプロジェクトを通じてDMMらしさを感じた部分ってありましたか?
若林:DMMのメンバーにはサービスを良くしたい気持ちが溢れているんだな、っていうのを改めて実感しました。人間って1回失敗すると次の挑戦に躊躇しちゃうじゃないですか。でも、DMMの人たちは止まらない。どうしてそんなことできるのかなって考えたんですけど、おそらく経営陣が本気の失敗を否定しないからだと思うんです。
僕自身、過去に一度やらかしてしまったことがあって、謝罪文と報告書、今後の対応などを準備して経営陣に謝りに行ったことがあります。そしたら拍子抜けしました。「もうそれはいいから」って言われたんです。それからすぐに「次はどうしようか」という話が始まって、建設的にプロジェクトを進めることができた。うちの社員は同じ過ちを繰り返さない。経営陣がそう信じてくれているからこそだと思います。
奥野:私もそれはすごく感じますね。今回のプロジェクトでも、実はローンチが数ヶ月遅れてしまったんです。さすがに図太い性格の私も体重がかなり減ってしまって。5月にこの事実を伝えなければいけなくなったとき、多くの関係者から責められるだろうなと思ったんです。でも、結局誰にも責められませんでした。むしろそこから関係者が一丸となってローンチに向けて走ることができたと思います。とても協力的で、温かい会社だと思いましたね。おかげで12月のローンチ時には無事リバウンドしました(笑)。
DMMではこのエッセンスが組織風土に広く浸透している
まわりを巻き込める人が生き生きと働いている
お二人はどんな方と一緒に働きたいですか?
若林:DMMには良くも悪くも誰かの働き方を咎める人はいません。だからこそというか、仕事を待っているような方だとこの会社には合わないと思います。なにも言われないからなにもしないのではなく、むしろ奥野さんのようにそれを利用して事業部を超えて巻き込める人が活き活きと働いている。僕はそういう方と一緒に働けると嬉しいですね。
奥野:自分の領域に線を引かない人。むしろ、その線を超えてくる方と私も一緒に働きたいです。それにDMMはこの規模にしてはかなり決断が早い会社です。それだけ変化も激しいので、そういった部分を楽しめる方にはすごく合っていると思います。
私が所属しているテックリード室に関して言えば、今回のプロジェクトに限らず、引き続きDMM全体の横断的な技術課題に向き合っていきます。俯瞰した立場から社内のさまざまなシステムに触れられて、その上で最適解を思案することができる。エンジニアとしてはかなり面白い環境が整っているのは間違いないですね。
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