DMMグループの一番深くておもしろいトコロ。
テクノロジー

日々の環境変化にテクノロジーで対応できた時、私たちの生活はどう変わるのか−−高性能センサーで発想する『IoT Ideathon』

DMMグループの一番深くておもしろいトコロ。

総合型モノづくり施設・DMM.make AKIBAで2018年8月25日、半導体メーカーのインフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社(以下インフィニオン)が、同社で開発した気圧センサーとマイクを用いての「高性能センサーで発想する『IoT Ideathon』」を開催した。インフィニオンがいま推し出す高性能センサーとはどんなものなのだろうか。また、これらのセンサーによって、私たちの生活にはどんなイノベーションが起こり得るのだろうか。30名ほどの参加者が9つのチームに分かれ、センサーを用いた課題解決のアイデアを発表した会の様子をレポートする。

エンジニアを中心に集まったイベント参加者

高性能マイクの組み合わせで自分の声を拡張

スマートスピーカーが広まってきている昨今、音声を用いたプロダクト開発にも注目が集まり、スタートアップをはじめとしたメーカーでは集音性の高いマイクへの興味が高まっている。特に、人がどの位置にいてもその声をしっかりと拾えるかどうかは、デバイスの利用体験の底上げに決定的に関わってくる要素となるが、そんな音声認識デバイス向けのマイクがインフィニオンのMEMSマイクだという。
「MEMSマイク"IM69D130"は、クリアな音声信号とばらつきの少ないマイク性能が特徴です。SN比69dB、AOP130dBSPLの低ノイズでの集音が可能なため、スマートスピーカーや会議システムなどに最適です。実際にAmazon Alexaを用いて、どれだけ離れた距離で音を拾うことができるか実験した動画をWebで紹介しています」

そう語ったのは、インフィニオンのパワーマネジメント&マルチマーケット事業本部の伊達奈央氏。MEMSマイクを複数組み合わせることで、どの方向から音が発生しているのか、またどういった種類の音なのかを解析することも可能なのだという。
そうしたMEMSマイクの特性を活かし、自身の声を拡張するウェアラブルマイクを提案して優秀賞を獲得したチームがある。メンバー自身が「自分の声を相手に聞き取ってもらえず悩んでいる」という彼らの提案は、首元に装着するタイプのマイクデバイスによって自身の声をできる限りノイズの少ない状態で拾い、それとは別のマイクで周囲の環境音を取得して音を分析することで、相手が聞き取りやすい音声をなるべくディレイの少ない形で実現するという内容だった。

MEMSマイクの特性を活かしアイデアを固める

当日の審査員を務めた東京大学大学院・情報理工学系研究科教授の江崎浩氏からは「自分の声を録音して流すだけではなく、さらなる活用や機能をのせることもできるのでは?」とのコメントもあったが、チームメンバーは「音声が小さいことによってコミュニケーションに問題が起きていることを以前からずっと課題に感じていたので、今回は会話がどれだけスムーズに行えるようになるかという点に特化した。ディレイをできる限り少なく、ほぼリアルタイムに処理できるところまでを想定して企画を組み立てた」と、彼ら自身の課題解決に対する力強い言葉を聞くことができた。

「声が小さいことによるコミュニケーション課題を解決したい」とプレゼン

気圧センサーで偏頭痛の予防・対策

そして、最優秀賞を獲得したのは、気圧センサーを用いて偏頭痛の予防や対策を行うアイデアだ。気圧の変化による偏頭痛に悩まされている人は多く、そういった人たちは僅かな気圧の変化でも体調に影響を受けているため、センサーで気圧のデータを取得し、アラートを促すことでそれを改善できるのではないかといった提案内容だ。デバイスはお守りの形に似せてデザインされており、「これを持っていることで痛みが和らぐのではという、病は気からの発想で神頼みもできるようなものにした」とのこと。会場からは偏頭痛に悩む家族に渡してあげたいなどの声が早速あがった。このアイデアを実現し得るのは、広い気圧測定範囲で超高分解測定が可能な気圧センサー「DPS310」だ。

気圧センサー「DPS310」を用いたアイデアで最優秀賞

インフィニオンの気圧センサーの特長は5つあり、「まず1つ目は、気圧測定範囲の広さと ±5cm(0.6Pa)の超高分解測定が可能なこと。2つ目は、アプリケーションに適合した最適なモード選択が可能なため、利用用途に応じてバッテリーの消費量をコントロールできること。3つ目は、静電容量方式を採用し、広い範囲で安定したパフォーマンスが可能なこと。4つ目はマイコンへの接続が容易なI2C/SPIデジタルインターフェースで、最後の5つ目は、2.0×2.5×1.0mm³サイズの小型パッケージによって、ウェアラブルやドローンなど小型化が求められるプロダクトにも適していることです」(伊達氏)

インフィニオン パワーマネジメント&マルチマーケット事業本部・伊達奈央氏

この気圧センサーは気流を計測し、それを高さに置き換えることで±5cmの高さの違いを測定することも可能だ。これまでの気圧センサーでは、気圧や温度などの環境要因が大きく結果に影響してしまい、ノイズが大きく正しい結果を得ることが難しかったが、静電容量方式を採用したことで高精度な測定を実現。人間が歩行する際の僅かな動きから、ビルの1階分の高さをベースとして何階にいるのかや歩数を検出できる。
また、精度の異なる3つの測定モードが用意されていることにも触れておきたい。登山など長時間での気圧・高さを測る場合には、精度はやや下がるが消費電流を抑えられる「ローパワーモード」、ランニングやスポーツなど集中したアクティビティの計測には消費電流こそ高くなるが「高精度モード」。そして、日常生活の健康管理などに活用できるものとして、精度と消費電流のバランスを取った「スタンダードモード」がある。こうしたモードの使い分けによって、様々なシーンでの細かな測定が可能になる。

センサーの仕様について参加者から熱心な質問をする場面も

同じく気圧センサーを用いたアイデアでは、LINE賞を獲得した2チームがある。それぞれ、気圧センサーでお風呂の水位と水の動きを感知することで浴室内での不慮の事故をなくすアイデアと、犬や猫が着る衣服に取り付けて健康状態を測るアイデアだ。
この2チームには、審査員のLINE株式会社・砂金信一郎氏から賞品のClova Friendsが贈られ、同氏はまた参加者全員に向けて「今回のイベントだけにとどまらず、せっかくのDMM.make AKIBAの場を活かして、ぜひプロトタイプ開発まで進んでもらいたい」と激励の言葉を送った。

LINE株式会社・砂金信一郎氏

デバイスメーカーとしての新たな挑戦

インフィニオンはこれまで、プロダクトやサービス開発を促進するような表立った動きをしてこなかった。しかし、「様々な切り口からのアイデアに刺激を受けた」という今回のイベントを経て、「今後こうした活動を続けていきたい」とも想いを語ったのは同社のPMM事業本部・本部長の後藤貴志氏。そのような想いもあってか急遽、予定していなかったインフィニオン特別賞が生まれ、睡眠時の様子をマイクで拾い、寝ている間の様子から身体の健康を改善する提案を投げかけるサービスアイデアを発表したチームに賞が贈られた。

インフィニオン PMM事業本部 本部長・後藤貴志氏(右)から特別賞を授与

「先ほど、プロトタイプの開発に進んでもらいたいという話も出ていましたが、インフィニオンはデバイスメーカーとして、皆さんが考えたようなアイデアのプロトタイプ開発を積極的にサポートしていきます。サンプル製作の活用もぜひ行ってほしいです」(後藤氏)
高性能センサーを軸に行われた今回のアイデアソンによって、普段私たちがどれくらいの環境変化を受けながら生活しているのかを改めて実感するとともに、そこに課題と解決する種があることを見つめ直す機会となった。日々の些細な環境変化に自力で対応してきた私たち人間が、もしテクノロジーでそのストレスを軽減できたとしたら、そこに費やしてきた力を真にやりたいことに注ぐことができる時代がすぐそこまで近づいているのかしれない。

今後これらのセンサーを搭載したプロダクトによって、より暮らしやすい未来が実現されていくことを期待したい。

センサーを活用したサービスの今後に期待!

 

 

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