DMMグループの一番深くておもしろいトコロ。
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機械学習を司るAlgoage、共同創業者2人が語る今と未来

DMMグループの一番深くておもしろいトコロ。

  • 安田 洋介(やすだ ようすけ)CEO・共同創業者:株式会社Algoage

    東京大学坂田・森研究室で機械学習、自然言語処理を専攻。トビタテ留学ジャパンという留学支援プログラムを通じて、シリコンバレーのスタートアップ、Exploratoryの創業にデータサイエンティストとして参画。帰国後、2018年株式会社Algoageを創業。

  • 大野 峻典(おおの しゅんすけ)CTO・共同創業者:株式会社Algoage

    東京大学松尾研究室で機械学習を専攻。在学中からFiNCでソフトウェア・深層学習エンジニアとして働き、松尾研究室にてリサーチエンジニアとして深層学習を用いたプロジェクトに従事。その後、Indeedでソフトウェア開発に携わり、2018年 株式会社Algoage創業。

2020年1月にDMMにジョインしたAlgoageとは?

2020年1月、アルゴリズム開発事業を行う「Algoage」がDMMとの資本業務提携を行いました。

CEOの安田洋介氏とCTOの大野峻典氏が共同創業したAlgoageは、創業からわずか2年4ヶ月。

彼らの事業内容はどんなもので、DMMへジョインした後、どこへ向かおうとしているのか。今回は、Algoageの事業全般について、そして今彼らが事業の主軸としている機械学習のビジネス領域の将来性にも迫るべく、インタビューを行いました!

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Algoage 安田洋介(写真左)/大野峻典(写真右)

 

 

まずは今Algoageが事業の主軸にしている機械学習自体について教えてください。

 

安田洋介氏(以下 安田):基本的には過去のパターン、あるいはデータのパターンからある傾向を見つけ出して、新しく入ってきたデータに対しても同じような結果を返すのが機械学習です。 

例えば、身長、体重、性別みたいなところだと非常にシンプルなデータとして扱えるんですけど、画像などはものすごく複雑なデータなので、これまでデータとしてきれいに扱えていませんでした。そこに対してAIでは、画像のパターンを上手に学習して結果を出せます。

AIは、例えば人間が「これは犬だね」とか「これは猫だね」みたいに判定していたものをプログラムでも自動でできるようにするというところでよく使われるようになってきている技術です。

 

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ありがとうございます。では、その機械学習を主軸にして、AlgoAgeは今どのような事業を行っているのですか?

 

安田:今までやってきたプロジェクトは、クライアントさんから「ビジネス課題があり、こういったところを自動化できないかと思っているんだけど…」というご相談をいただいた上で、コンサルティングから入り、必要なシステム、アプリケーションの定義をして、実際に開発するところまで一気通貫して行ってきたものが多いです。

問い合わせは様々な業界の企業の皆さんからいただくのですが、僕らとして狙っていきたい領域はいくつかあって、その一つがゲームの領域です。

 

これは今、実際にDMM GAMES(現 EXNOA)の方と協力しながらゲームの中で、どの部分が自動化できるかを探っているところで、例えば、ユーザーの傾向などがあります。ユーザーのログから傾向を見出して、そこからゲームを進化させる方向性を自動でサジェストしてくれるようなAIを作るなど、そういった部分を考えています。

また他の領域だと、土木建築や保険業界の方々からよくご相談いただき、AI技術との相性が良い印象を受けているので、そこに注力していくことも考えています。

 

知らない業界だからこそ常識を変えられる

 

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ゲームなどでの活用はイメージが湧きやすいですが、土木や建築などでは具体的にどのような活用がされるのでしょうか?

 

 

大野峻典(以下 大野):例えば、土木とか建築では現場監督がいて、彼らは現場の危険性や従業員の顔色など、現場を実際に目で見ながら管理している部分があると思います。

簡単なイメージですが、建機に近付きすぎている人がいたら「ちょっと気をつけてね」といったアラートを出すとか。

現場監督自身が目で見ながら、これまでの個人の経験から、「この現場で作業するあなたは次、ここに気をつけたほうがいいよ」といった話をすることが多いです。

Algoageが行うことは、こういった経験から培った職人の勘のうち、データ化できる部分をデータ化し、AIに学習させていくようなイメージです。

 

こういった土木や建築業界など、IT化がまだあまり進んでいない業界に進出して行こうという狙いもあるんでしょうか?

 

安田:土木や建築以外に保険なども該当するのですが、基本的には昔からあるビジネスで、人が目で見たり、テキストで判断したり、人の判断に依存しているところは、AI技術での伸びしろがものすごく大きいと考えています。

例えば、保険領域で言うと、「事故を起こしてしまいました」とか「こういう状況って保険で対応できますか」などお客様からの問い合わせは電話で来ることが多いと思います。

 

このような音声の情報を自動で読み取って、対応方法を自動で判定し、音声で返すというような、情報の意味解釈が介在する業務フローは、最近のAI技術の進化でソフトウェアとして自動化できる可能性が現実的になってきた領域で、これから大きなチャンスが生まれてくると考えています。

 

問い合わせを多く受けている業界以外でも、今後広げて行きたい業界などがあれば教えていただきたいです。

 

安田:不動産業界もかなりチャンスがあると思っています。

例えば内見を例に上げると、人間が実際にその物件に行けば、奥行きや部屋の広さなどの3次元の情報を得ることができますが、画像では2次元の情報しか得られません。

360度カメラなども最近は流行っていますが、あれも実質的には2次元の情報なんです。

こういった2次元の情報を3次元的に復元する技術があるので、それを活用すると寸法が分かったりします。

 

他には例えば、壁紙を変えたい時もゆがみ方とかが分からないと、その壁に模様をつけようと思っても上手くいかなかったりすると思うのですが、ちゃんと3次元的に構造が分かっていればきれいに壁の色が変えられたり、模様が変えられたりもします。

 

360度カメラのような部屋の内覧ができるというだけでなく、住んだあとに「こういうリフォームをしよう」とか「こういう家具を入れよう」というところまでちゃんとイメージができるようなサービスができるかもしれないということですね。

 

安田:そうですね。今はまだ実サービスとして広く使われるものが出ていないように思いますが、研究としてその領域は非常に盛り上がっているので、そう遠くないうちに広く普及するレベルの技術が可能になると考えています。

 

あと不動産で言えば、飲食店や小売の出店の際も機械学習が役立てられると思います。

例えば、物件がある近くの通りにカメラを設置しておくことで、物件周辺の通行人のイメージや時間帯別の通行人の動向なども把握ができるため、ターゲットや業態によってオススメの物件などを最適に判断ができるようになって、出店判断などもしやすくなると思います。

 

人間のモチベーションハックの実現が課題でありチャンスである

 

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大野:あと、僕らが今年DMMと一緒に行っていくもので言うと、ユーザーがゲームやアプリにどうはまっていくかということをひたすら追及していく予定です。

これは人間のモチベーションハックという点では、応用領域が広いかと思っています。例えばここで得た知見は教育系のアプリに応用すれば、ユーザーが学習をにハマる、すなわち継続する仕組みも作れるのではないかと思っています。 

 

モチベーションのハックの重要な要素の一つとして、適度な成長実感があると思っています。適度に難しい課題が順に現れ、解けることが広がっていく感覚を通して人はものにハマります。 

 

ゲームであれば、常にぎりぎり倒せる敵を用意するという難易度調整、教育系であればぎりぎり解けそうな問題を見つけるような調整が重要になります。

既存のアプリケーションだと、特定の難易度パラメータをセットしてプレイしてみるテストを繰り返し、調整していくといったように、人が時間をかけてチューニングしていることが多いです。

これに対して、今では強化学習というアルゴリズムを用いて、AIが何回も試行錯誤して人間に似たプレイスタイルを再現することができます。これを用いると、テストプレイを強化学習エージェントが代替し、ゲームの難易度調整にかかるコストを下げることができます。

 

もう一つ、ゲームでも学習でも、ユーザーの成長に対する良いアシスト、ヒントをどれだけ出せるかという点も大切です。

難しくて解けない課題に当たった時に、ゲームでも勉強でもそうですけど、理想はユーザー自身で乗り越えられれば良いのですが、一人で乗り越えることは難しいこともありますよね。実社会だと先生や友人が導いてくれ、学習効率が良いことがあると思います。

これを、アプリケーション上でAIで再現するというアプローチもあります。上級ユーザーの戦略をデータからAIが学習し、初級ユーザーにサジェストするような機能です。

こういったことをまずはゲームで開発し、そこで得た知見を教育など人間のモチベーションハックが必要な分野に広く展開していきたいと思っています。

 

あとは、「頑張ったね」って適度に褒めてくれるとより嬉しいですね(笑)。お話しいただいたような教育系のアプリにおいて課題の難易度調整など人間のモチベーションハックができるものはまだないと思うので、面白そうですね。

 

大野:そうですね、教育系アプリなどではまだ他にないと思います。

モチベーションハックが一番上手くいくのはゲームの領域だと思っています。ゲームの世界では、先ほど言ったような強化学習等を用いた難易度調整のテストを自動化するような事例はいくつかあります。

ですが、他にもモチベーションハックに関して、まだまだ成長余地は残っていて、チャンスが大きい面白いエリアだと考えています。

 

ゲーム以外にもDMMと進めて行くものはありますか?

 

安田:ここではまだ詳細はお話しできませんが、様々な事業部の方とお話を進めています。事業部の方の考えていることを詳しくヒアリングさせていただきながら、技術的に解決可能な問題設定に落とし込んでいる段階ですね。

機械学習は、「理論上できるはず」みたいなところの幅はとても広いため、どの事業部とも何かしらの価値を生み出すチャンスはあると感じています。一方、問題設定を丁寧に行わなければその本領を発揮できないため、まずは事業の課題をしっかりと理解することが重要です。そのために入念にコミュニケーションを取りながら、相性の良い領域を探っています。

 

最終的には、実際にデータを集め、実験し、結果の計測までやらないと、本当に良いものができるのかは分からないので、時間やコストがかかります。なので、最初の段階でできるだけ不確実性を減らせるよう、しっかり準備する必要があります

 

一つの業界だけでなく広い分野で使えるものを作りたい

 

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DMMとのゲーム領域での取り組みは長期間のものになりそうですか?

 

大野:そうですね。以前作成した「DeepAnime」もそうですが、僕たちは大きなプロジェクトはだいたい1年くらいかけて開発することが多いです。

今回のGAMESとの取り組みも1年くらいかかると考えています。

 

 

では今後は、約1年GAMESの改善をしていきながら、そこでの知見を他分野に広げていくイメージでしょうか?

 

大野:そうですね。人のモチベーションをハックするというような軸は様々な業界で活用できるのではないかと思っています。レコメンド機能のように、たくさんの分野で使えるものを作りたいです。

 

安田:DMMとの取り組みで知見を溜めて、先ほどお話ししたようにゲームから教育などへと、大きく横展開していきたいですね。会社としても成長は加速させていきたいと思っていて、自分たちからも案件を増やしにいこうとしていく時に、DMMの事業数の多さや横のつながりはとてもありがたいですね。

 

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ーありがとうございます。最後に、コンサルティング的な依頼が多いとのお話でしたが、「機械学習を活用したい、会社を変えていかなくてはならないと思っているけどどこから始めて良いか分からない」というような相談ベースでAlgoageさんへ連絡しても良いのでしょうか?

 

大野:そうですね。まずはざっくばらんに相談いただければと思っております。

実際にビジネスで価値を生むAIを作るうえでは、AIの技術的な知見にとどまらない、総合格闘技のような取り組みが必要になります。AIを適用すべきビジネス課題の特定、AIの学習に必要なデータの設計・収集、最先端のAI技術に関する知見、AIを組み込んだ真に使いやすいアプリケーションの設計・実装などです。

 

弊社では、これらのニーズに対して一気通貫でサポートしていますので、「AI活用に関してどこから取り組むべきか分からない」といった方から、「方向性は見えているが、データ設計・AIに関する知見が欲しい」方まで、ひとまず相談していただければと思っております。

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