DMM AUTOが立ち上がったワケ
DMM AUTO事業部について教えてください。
2017年11月にクルマ流通への参入のために立ち上がった事業部です。当初は特に自動車業界での仕事にこだわりがあったわけではなく、DMMとしての相性を含めたマーケットの状況やチームメンバーの特性などを考慮した結果、クルマ流通業界に参入したいと思い、戦略を作りました。
実は最初は、CtoCのクルマ売買プラットフォームを作ろうとしてたんですよね。
私自身クルマの業界でソフトウェアサービスを作った経験はなかったのですが、まぁなんとかなるだろうと思って、業界での経験不足はあまり気にしてませんでした(笑)。
DMM AUTOローンチから1年半が経ちますが、新規事業立上げを通じて、DMMならではカルチャーなどについて感じたことはありますか?
まず、事業部長が社長のような会社だなと思いました。クルマ業界は特殊な業界というのもあるかもしれませんが、いい意味であれこれと任せてもらえるので現場最優先で物事を進めやすいですね。
また、4000人の社員がいるからこその利点として、「スポットでここを手伝ってほしい」とか「この点についてアドバイスがほしい」といった自分が求めていることをきちんと明確にしておけばそれを実現してもらえる会社だと思います。良い意味でなんでもアリの会社ですし、上層部の方々にもバックオフィスの方々にも「事業部最優先」文化が根付いてるからこんなふうに動いてもらえるんだなと思うことが多々ありますね。
社長室にいた時にいろいろな部署の方々と関わっていたので、そこで社内にどういう方がいるのか把握できたのも役立っているのかもしれないですね。
サービスを作る時に大事にしているポイントなどはありますか?
これは理想論と言われればそうなんですが、自分とメンバーの大事な時間を使って勝負するからには、「儲かるサービス」を作るというよりは「今までになかった価値を提供できるサービス」を作りたいと心がけています。
特にソフトウェア業界では革命がものすごく早いサイクルで起こるので、そのなかからクルマ業界に活用できそうなアイデアや技術をピックアップして最適化している感じですね。
もちろん、ビジネスとして成り立つこともとても重要ですが、私は「お金=価値」と考えていて、ビジネスは簡単に言うと「提供できる価値が多い企業やプレイヤーにお金が集まるという仕組み」じゃないかなと思うんです。なので、「自分たちはどんな価値を誰に届けられるのか?」ということにフォーカスするようにしています。
こんなことを言ったら亀山会長に怒られるかもしれませんが、チームメンバーに事業部の収支の話はほとんどしないですね(笑)。
「より良いプロダクトやサービスを提供するにはどうしたらいいのか?」ということに全員が集中できるように配慮していますし、会社や上司の要望ではなくお客様に喜んでもらうにはどうしたら良いかを最優先に考えてほしいということを常に伝えています。メンバーからすると、かなり難しいオーダーなんですけどね(笑)。
DMM AUTOもウルモビもそうですが、既存のクルマ業界の概念とは少し違う仕組みを導入することによって、消費者の方々に新しい選択肢を提供することができますし、自動車業界全体を見渡しても「クルマ流通×テック」で成功しているサービスが今のところあまりないだけに、業界としての良い成功事例になればいいなと思っています。
自動車業界は100年に一度の変革期? 中古車市場はどうなっていく?
自動車業界について「100年に一度の変革期」という言葉をよく目にしますが、実際どうなんでしょうか?
正直、「100年に一度の変革期」ってなんの話なんだろうとは思いますね。
というのも、そもそもクルマ業界は、大きな発展が見られるようになったのは戦後の話なんです(笑)。それにより本質的な話として、クルマにソフトウェア技術がどんどん使われるようになると改革は100年に一度の頻度では全く済まないと思うので、「今が改革の時期です!」というよりは「クルマ産業の改革もソフトウェアサービス並みに頻繁に起こらないと生き残れないですよ」という話なんじゃないかなと思います。
”オートアフターマーケット” とは? オートアフターマーケットでの変革はどのように起こっている?
オートアフターマーケットとは、車を販売してから廃車になるまでの全体のサービスのことを指していて、中古車の売買、整備、レンタカーなど多種多様な業界になっています。
DMM AUTOが参入しているのは、そのオートアフターマーケットのなかで「クルマの買い取り」という業態なのですが、車の売却は平均5〜7年に一度と言われているので、頻繁に行う体験ではないことから、良くも悪くも口コミが広がりにくい業界だと思っています。
なので、サービスを認知してもらうまでに3年くらいはかかる印象なのですが、動きの激しいソフトウェアサービスで認知までにそこまでの時間がかかる業界を選ぶことはあまりないので、テック企業からの参入は少なく、だからこそテック視点から改革を起こせるチャンスがたくさんある業界だなと感じています。
車離れが起こっているとは言われていますが、依然として市場マーケット規模は3兆円あり、新車販売も合わせた自動車業界全体だと国内だけで60兆円あるマーケットなので、そのなかで「ネットで簡単に車を売れるサービス」というポジションでDMM AUTOが浸透すればとても面白いと思っています。
オートアフターマーケットのテック先行サービスは少ない!? その理由
いろいろな意見があると思うのですが、私が実際に事業開発を行っていて難しいと思うのは文化の融合だと思います。
DMM AUTO事業部で必要な要素で言うと、以下が代表的なものでしょうか。
ざっと考えただけでもかなり多様なスキルが必要で、特にクルマ、ソフトウェアプロダクト開発、事業開発で人種が全く異なることから、全く違う文化をどう重ね合わせてシナジーを産むかというのはとても難度が高いと思います。
中古車専業の企業がソフトウェアプロダクトを作れるチームを内製しようとすると採用がとても難しく、給与の水準も全く合いません。それこそ営業さんが全国を必死に走り回っているなかで、開発の人たちは高給取りで定時に帰るとなれば社内でバランスを取るのは難しくなるはずです。
また、テック企業がクルマ業界の知見なくプロダクトを作ると、綺麗だけど実際のマーケットにはフィットしないものになりがちだと感じていて、いろいろな文化や人種の良いところを掛け合わせて作っていくことが必要だと考えています。
その観点で言うと、私の場合、多種多様な人種と文化が混ざり合うニューヨークで過ごした経験がとても役に立っていて、チーム共通の「当たり前」や「正解」が存在しない環境でリーダーとしてどうバランスを取って舵を切っていくかというコツみたいなものを自分が知っていた点はラッキーだったなと思います。
DMM AUTOブランドから新サービス「ウルモビ」が登場!
~クルマを売りたいお客様と、クルマを買いたい業者の最適なサービスの形を「ウルモビ」で追求したい~
新サービス「ウルモビ」について教えてください。
新サービスのウルモビは、査定から売却までスマートフォンで簡単にできるDMM AUTOアプリの派生サービスで、クルマや車検証の写真がなくても査定に出せて、DMM AUTO以外の業者さんにも買い取りの相談ができるサービスになっています。
<サービス概要図>
このサービスを作った経緯としては、先ほどもお伝えしたように「できるだけ皆さんに価値があるサービスを作りたい」という思いに起因しています。
買取業界と言っても多種多様な会社があるなか、会社や店舗、時期によって高く買い取れるクルマにもかなりバラつきがあり、DMM AUTOにしても高く買い取れるクルマもあれば安く出てしまうクルマもあります。そこで、私たちが得意ではないクルマや対応できないお客様にも良い売却体験をしてほしいなと思い、作りました。
DMM AUTOでは一般のお客様向けにクルマを販売していないので、乗り換えのお客様の相談には乗れなかったり、購入したクルマが納車されるまでの代車が欲しいと言われてもお出しできなかったりと、ネット完結サービスの特性上対応できないお客様も残念ながら多くいらっしゃるのが現状です。
また、現状の一括査定では、その加盟店さん全社に個人情報が共有されてしまうような規約になっているケースがほとんどで、気軽に一括査定に申し込んだ結果、鳴り止まない電話に申し込みを後悔することになってしまうお客様も多いと聞いています。
一度公開してしまった個人情報は削除できませんし、今の時代に合わないシステムなのではないかと思っています。
一方で、一括査定に加盟している業者さんたちにしても電話番号1つに1500〜4000円を払っている手前、どうしても何度も電話をかけざるを得ず、その結果、個人情報の取り扱いを気にかけるリテラシーの高いお客様が減り、一括査定に申込むお客様が所有するクルマの質もどんどん悪くなって商売が成り立たなくなるという現象も起こっています。
また、一括査定では「お客様に電話して査定の予約を取り付ける」という加盟店の業務が発生するのですが、効率良く電話するにはコールセンターの機能が必要になる反面、コールセンターを持たない加盟店では店舗の販売員がコールしなくてはならず、ようやく電話がつながったと思えば「もう電話してこないで!!」と怒られることもしょっ中なので、「お客様に満足のいく査定をして、ぴったりの乗り換えのクルマを提案する」という本来の業務を行うまでに疲弊してしまう悪循環が起こっているとも思います。
ウルモビは具体的にどんな流れのサービスですか?
WEBサイトで情報を入力するだけで相場価格が分かり、査定の予約に際しても、加盟店に個人情報を渡すことなくオンラインで完結するので電話がかかってきません
(本人認証と取引に関するやり取りのために、ウルモビ事務局には電話番号をお知らせいただきます)
業界初、オンラインワンストップ完結ができたのはなぜですか?
現状、一括査定でクルマを売却しようとすると、
- クルマ販売のサイトを見て自分と同じような車を検索
- 相場を確認
- 一括査定サイトを選び申込
- 多数の業者と査定のやり取りを個別に行う
- 1社を選んで売却
という流れになると思うのですが、各工程で業種・業態がバラバラで、ビジネスモデルで言うと前者二つの行程は媒体モデルになり、後者二つはクルマの買取事業者にあたります。
要は、実は業態が全く違うんですね。
媒体の会社では、たくさん集客して複数の会社に少しでも多くの情報をお出しすることがKPIになり、買取業社では同業他社よりも1台でも多く買い取ることがKPIになります。このように実は全く違うビジネスモデルを合体させることで、一般のお客様がよりスムーズに最適な場所で取引できるサービスを目指していきたいと考えています。
今後のウルモビとDMM AUTOブランドとしての展望を教えてください。
DMM AUTO事業部立ち上げ当初から掲げている【DRIVE CYCLE INNOVATION】というビジョンがあります。
クルマを所有する人が減っているとよく言われていますが、関わり方はなんであってもクルマが人生にもたらす体験の豊かさ自体は変わらないと、そんなふうに私たちは考えているんです。超高級車メーカーでさえ自分たちがクルマづくりを続けるためにSUVを作って稼ぐと言われているくらいで、「様々な体験ができるクルマ」が市場に求められていて、今の時代にあってクルマは「リッチな体験」をするための重要なアイテムだと考えています。
そこで、テクノロジーを使ってクルマの売買コストがどんどん下がっていけば人生のライフスタイルに合わせてもっと気軽に乗り換えられるようになったり、シェアリング目的でクルマを選んで小遣い稼ぎがしやすくなったりと、ちょっと大げさですけど、クルマを所有されている方々の人生が豊かになる手助けができればいいなと考えています。
クルマ業界の方々からはなかなか改革が進まないとか、プレイヤーの年齢層が高いとかネガティブな話をよく聞くんですが、私はあまりそうは思っていなくて、かなり面白い業界だと感じていますし、テックが介入する余地がまだ多分にあると思います。
DMMが参入するからには誇れるソフトウェアサービスの提供をするというのは必須だと考えているので、「課題をテクノロジーで解決する」ということもサービスを考える時に大事にしています。
クルマの売買は素人ではなかなか難しいですし、取り扱う価格も高いのでテクノロジーよりも対人の安心感のほうが大事だという意見も重々承知のうえで、一般のお客様に魅力的な新しい選択肢を提供するために、DMM AUTOだからこそできるサービスの形を追求していきたいと考えています。
なんだかちょっと知ってるふうなインタビューになっちゃってる気がしますが(苦笑)、私自身、特に事業部長になってからは日々成長しているなと感じており、過去に自分が作ったドキュメントを見ると精度の甘さにがく然とすることが多いぐらいにどんどん成長しているので、もしかしたら今回のインタビューも半年後には「あの頃は若かったな…」なんてちょっと恥ずかしくなっているような気がします。そんなわけで、メディアに出て発言するのは苦手なんですよね(笑)。
最後に、今回全く新しいサービスであるウルモビをローンチするにあたり、快く加盟を承諾してくださった自動車業界の皆様に心から感謝を申し上げたいです。従来とは違うサービスであるウルモビに対応していただくことで、加盟企業様それぞれにとっては業務フローの変更も必要になるはずです。それだけに、ウルモビのローンチ後にその様子を見てから加入という判断をされても当然だと思うのですが、実際には20社以上もの皆様に快諾していただきました。そこには、新しいものに対する自動車業界の柔軟な姿勢や漢気のようなものを感じるとともに、IT業界とはまた違う経営者の皆様の姿勢のようなものも垣間見た気がしています。一般のお客様も含めて、関わってくださる皆さまにとって価値のあるサービスになるよう、チーム一同尽力して参ります!
▼サービス詳細
ウルモビ by DMM AUTO
公式サイト :https://auto.dmm.com
Google Play : https://goo.gl/AZ9FL6