はじめに
はじめまして。プラットフォーム事業本部の室木(@masa-m)です。 私はDMM.comのユーザーレビュー基盤の開発、運用、保守を行うチームでスクラムマスターをしています。 私のチームは2018年7月頃に結成され、すでに稼働していたユーザーレビュー基盤や通知配信基盤を引き継ぎました。
現在はユーザーレビュー基盤をさらに発展させるべく、リプレイスを進めています。 今回は、我々のチームで行っている心理的安全性の担保に役立つ取り組みをご紹介したいと思います。
なお、過去のユーザーレビュー基盤の変革シリーズは以下のリンクよりご覧いただけます! inside.dmm.com
心理的安全性とは
簡単に言えば「ありのままの自分を受け入れてもらえる環境や雰囲気」です。
- 自分が間違っていたことをした時に、それを素直に認められる雰囲気
- わからないことや困っていることがある時、チームに助けを求められる雰囲気
- 失言や失敗をしても拒絶や非難されることのない雰囲気
このように思えることがあれば、心理的安全性の高いチームと言えるはずです。
Googleが公開したre:Workではチームの効果性の向上に関する5つの柱を下記のように定義しています。
心理的安全性 - 「チームの中でミスをしても、それを理由に非難されることはない」と思えるか。 相互信頼 - 「チームメンバーは、一度引き受けた仕事は最後までやりきってくれる」と思えるか。 構造と明確さ - 「チームには、有効な意思決定プロセスがある」と思えるか。 仕事の意味 - 「チームのためにしている仕事は、自分自身にとっても意義がある」と思えるか。 インパクト - 「チームの成果が組織の目標達成にどう貢献するかを理解している」か。
また、高パフォーマンスを発揮するチームに固有の5つの力学のうち、圧倒的に重要なのが心理的安全性であるとも記載されています。
私はこの記事を読んだことがきっかけとなり、チームの心理的安全性を高めたいと思うようになりました。
引用:Google re:Work「効果的なチームとは何か」を知る / チームに必要なものを見極める
測定方法
エイミー・エドモンソン氏曰く、以下の7つの項目に対してポジティブな回答が多ければチームは心理的安全性を高く感じていると判断できるとのことです。
1. チームの中でミスをすると、たいてい非難される。 2. チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。 3. チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある。 4. チームに対してリスクのある行動をしても安全である。 5. チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。 6. チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。 7. チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。
引用:Google re:Work「効果的なチームとは何か」を知る / 心理的安全性を高める
私のチームの心理的安全性
エイミー・エドモンソン氏の測定方法を元に、下記の回答項目でアンケートを取りました。
1. そう思う 2. ややそう思う 3. どちらとも言えない 4. ややそう思わない 5. そう思わない
最もポジティブな回答の点数を4点、最もネガティブなものは0点としてチームメンバー7人に回答してもらいました。
4点×7問×7人で最高点は196点のところ、アンケート結果は合計で176点となり約9割の点数でした! この結果から心理的安全性はすでに高いと言えそうです。
しかし、なぜ高いのかを理解する目的と、またさらに上を目指していくためにも「心理的安全性」への理解を深めるワークショップを行いました。
心理的安全性の理解を深めるワークショップ
チームで心理的安全性について議論するために、まずはシステム開発の現場でありがちな問題集を作成しました。
チームメンバーには作成した問題に対して下記観点で付箋に書き出して共有してもらい、メンバーが求めている心理的安全性とは何かを議論しました。
- 自分が問題を指摘される側の場合、どのようなリアクションをするか?
- 指摘された場合どう思うか?
- 自分が問題点を指摘する側の場合、どのように伝えるか?
- 指摘する場合に何を心がけるか?
ワークショップの狙い
このワークショップで心理的安全性についての理解を深め、チームメンバーの情報の「受信の仕方」と「発信の仕方」を自己開示することで心理的安全性を高めます。
有名なジョハリの窓でいう「開放の窓」が広くなると、チーム内の認識のズレが軽減され、コミュニケーションが円滑になりストレスも軽減されることを狙ったものです。
実際に議論した具体例
具体例 レトロスペクティブで完了したタスクが少なかったことを改善したいと話が上がり、原因について各自思うことを発言してもらった。 意見 Aさんのレビューが遅いせいでプログラムのマージができずタスクが完了に出来なかった。(Bさん) 1.自分がAさんだったら、どうリアクション取りますか? 2.言われた時どう思いますか? 3.自分がBさんだったら、どのように伝えますか? 4.何を心がけて伝えますか? 4枚付箋を記載してください
上記のような具体例をいくつか用意し、チームで議論しました。
チームで議論した感想
過去にチーム内で問題となったテーマを元に議論すると、問題の背景や置かれている状況をイメージしやすく、チームメンバーの情報の受信と発信にどのような傾向があるのかについてまとめやすく感じました。 逆に 過去の事例を元にしない問題 は、背景や状況に対する捉え方がメンバーの過去の経験により異なってしまうため、同じ問題でも情報を受信した時の印象が大きく異なりました。 その場合は議論する際に下記のような「どのような状況を想定していたか?」について聞くとなぜ印象が異なったのかが明確になり議論が進みます。
- 自分を助けてくれるメンバーがいる想定か?
- 問題を指摘した人は誰を想定したか?
私のチームでは役職が高い人や、自分との関わりが少ない人から言われるほど「嫌悪、恐怖、従順」になりやすく、関わりが多ければ「改善意識」が向上することをチームで認識できました。 情報の発信の仕方についての議論では「個人を限定して伝えない」という意見が多く出ましたが、情報の受信をする側として考えた場合 バイネームで指摘されることは悪くない というチーム内の共通認識も得られました。 バイネームで指摘をする場合は、個人を否定しないように言い方に気をつけて「どうしてほしいか」を伝えれば、感情的になりにくいこともチームで確認できました。
また、 現状進捗具合がうまくいっている状態だが、それが崩れ始めると上記の対応や心がけは変わる可能性がある ことも認識できました。
まとめ
議論するために用意する具体例は下記2パターンがあります。
- 過去の事例を元にするパターン
- 過去の事例を元にしないパターン
過去の事例を元にするパターンの場合。 背景や状況がイメージしやすくチームの価値観の傾向を知ることができる。
過去の事例を元にしないパターンの場合。 メンバーの過去の経験によって認識に差異が生まれるので「安全だと思う状況」についての議論がしやすい。
今回のワークショップを通して、チームの価値観の傾向やメンバーが安全だと思う状況の確認ができました。 どこまで踏み込んで伝えて良いのかについては、時間をかけて探らなければ人間関係がギクシャクすると思います。 今回行ったワークショップで、どこまで踏み込んで伝えても良いのか分かったことや、前もって「状況によっては気遣いをできないこと」をチームで認識できたことも心理的安全性を高めるのに役立つと思います。
今回は主に人間関係(チームメンバーの行動・発言)に対して議論し、どの様に考えるかを議論しましたが、次回はチーム内の心理的安全性が向上している取り組みや仕組みについて議論しようと思います。
最後に
私の所属するプラットフォーム事業本部 Customer Decision Support Teamでは、一緒に働いてくれる仲間を探しています。 それぞれの得意分野を活かしながら、みんなでフロントエンドからインフラまでフルスタックを目指しているチームです。 少しでもご興味のある方はぜひご応募ください!