CESとは
ラスベガスで毎年1月に開催。世界各国の企業や団体などがコンシューマー向け電化製品や各業界の最新テクノロジーを活用した未来を提示、PRするイベントで、「家電の見本市」「デジタル見本市」とも言われています。 大手家電メーカー、自動車メーカーを中心に日本からの出展社や来場者も多くあり、各業界注目のイベントとなっています。
今年はイヴァンカ・トランプ氏によるキーノートセッションや、トヨタ社が発表したスマートシティ構想、ソニーグループが発表したVision Sなど、大きな話題が目白押しでした。
CES展示紹介
VR
Pimax Vision 8KX
Pimaxのブースでは、Pimax Vision 8KXを体験しました。 Pimaxシリーズは、「5K XR」モデル以上のラインナップでは水平視野角200度、垂直視野角170度と、視野角に特化したスペックです。 Pimax Vision 8KXの最大の特徴は解像度の高さにあり、アップコンバートせず、ネイティブで片目4K解像度を実現しています。 体験したコンテンツはフライトシミュレーター「DCS:World」です。 「DCS:World」自体はHTC VIVEで2016年にプレイした経験があり、あこがれの航空機がVRで操縦できることにとても感動した一方、解像度の問題でコクピットの計器類の文字が見えず、操縦が難しかったことを覚えています。 Pimax 8KXは解像度が高く、計器類の文字がくっきりと見え、素晴らしい体験でした。 さらに、フロントクッションも後頭部のバンドとクッションそれぞれも、VIVE Proのように快適性を重視した大きめな設計で、フロントヘビーになりがちなハイエンドVRデバイスに合った重心設定となっているように感じました。
Panasonic VR Glasses
1月5、6日に行われていたCESのプレス向けイべントにてパナソニックより発表されたPanasonic VR Glassesは、twitterで大きな話題となっていましたが、残念ながら7日からの一般公開日では展示のみで手に触れることができませんでした。 デザインはこれまで一般的だったVRデバイスと比べて独特な路線を走っており、SF映画に出てきそうな印象のかっこ良さです。 HDR対応とのことなので、人間の目により近い色彩表現が可能で、特に写実性の高いVR表現ではその恩恵を受けることができそうです。低解像度ヘッドセットで問題となりがちなモアレ(スクリーンドア効果)も低減できているとのことなので、スタイリッシュなデザインで高品質を実現したデバイスと言えるはずです。 ゲームないしエンタメ文脈でのC向け提供を目指すのか、あるいは、産業向けに特化していくのかが現時点では分かりませんが、今後の動向に期待します。
Pico neo2
VRハードの製造において圧倒的な実績を誇るPico社からは、OculusQuestと同様のStandalone 6DoF VR端末が発表されました。SteamVRとワイヤレスに接続しVRゲームを遊ぶことが可能とのことです。 デモではAngryBirdsのVR版がプレイできました。コントローラーのトラッキング方式はOculusシリーズで使われている光学式とは違い、電磁気方式を採用しており、より広範囲をトラッキングすることが可能です。
VRのデモとしての活用事例
AR/VR ゲーミングのセクションではないゾーンでも、HTC VIVE ProやOculus Rift Sを使用したデモ展示が複数ありました。 例えば、車の自動運転でよく使われるLIDAR(ライダー)深度センサーのブースでは、いくつかある製品でそれぞれの視野角や検知性能が直感的にわかるように、Oculus rift sでデータを示す方法が取られていました。また、Blackberry QNXのブースではVIVE Proを使用し、実際のバイクにまたがってVRシーンで操作感などを試すことができる展示がありました。 このように、産業向けの情報提示の手段としてVR技術の活用が広がりつつあることを実感できました。簡単には試せないような製品や直感的には仕組みを理解しづらい製品をVRで試すことによって、短時間で簡単に情報提示ができるようになった結果、大きな会場や大掛かりな造作がなくても展示が可能になり、コンテンツの切り替えも容易になったことは大きな利点です。その流れから、今後もVRを使ったデモンストレーションの需要は伸びるだろうと思います。
AR
CES 2019で話題となったNrealLightのように、軽量かつローエンド向け、CPU及びバッテリー外部接続型のARグラスが複数登場しました。NrealLightの他、am glass、MADGAZEの3製品が発表されていましたので、それぞれのスぺック比較表を作ってみました。昨年のCESで発表され、KDDIとの提携が話題になったNrealLightを追随する形で登場している印象を受けますが、フレームのデザインやシーンの共有等、各社ともに差別化を図っており、今後の発展や他製品の登場が期待できます。
NrealLight | am glass | MADGAZE | |
---|---|---|---|
FOV | 52度 | 52度 | 45度 |
解像度 | -- | 1920*1080 | 1280*720 |
DoF | 6DoF | 6DoF | 3DoF |
重量 | 88g | 88g/95g | 75g |
Letin AR
Letin ARは、中心に複数の点状ミラーが埋め込まれているのを特徴とした、ARグラス用の新しいレンズです。ピンホール効果から着想を受けたものとのことで、ピンホールの代わりに角度のついたミラーをレンズに埋め込むことでディスプレイの映像を反射し、ユーザーの瞳孔に光を届けます。ミラーは非常に小さく、また瞳孔に近いため、使用時にはその存在に気づくことなく、通常の視覚に映像を重ね合わせてAR表示ができるという仕組みのようです。この仕組みを採用したARグラスにはハーフミラーが不要で、ARグラスの小型化に貢献できる技術と言えます。 実際にこのレンズを使用したARグラスの試作品を体験したところ、 解像感が高く、ミラーも全く気にならずに利用できました。仕組み上、自分が見ているものが相手からも見えるということも起きないため、非常に可能性を感じるソリューションでした。
他
複数人で同じ空間を共有できる大きなAR体験ブースで注目を集めたARグラスrealmax、視野角が広く、いろいろなオブジェクトのトラッキングが可能なRhinoXなど、面白いARデバイスが複数展示されていました。それらについては今回は紹介できませんが、今年のイベントではやはりARが非常に盛り上がっていたように思います。
VRカメラFITT360

FITT360は、撮影者が首に掛けて360度動画の撮影を行えるハンズフリーVRカメラです。 4K30fpsでの撮影が可能で、特殊なマウント不要でハンズフリーな360度撮影ができるため、アクションカメラとしてや救急医療現場においてなど、様々 なシーンでの利用・活躍が想定されているようです。一人称VR動画撮影において非常に 取り回しがきくようになるので、VR動画の撮影現場で新しい表現の開拓が行われるのではないかとワクワクしました。
Data-Vμ
ドラゴンボールの「スカウター」のような、片眼HMDの開発キットを展示していました。 主にナビゲーションやインフォメーションなどを表示するためのもので、予め決められたアイコンや数字を表示することができます。 例えば、バイクのヘルメット内に速度計とナビゲーションの矢印表示ができます。 画面表示は極小のmicroLEDで、とてもハッキリ・クッキリと視認することができました。
デルタ航空 PARALLEL REALITY
方向毎に異なる映像を反射する鏡(中)
常にパトリックから見えているパトリックだけの映像(右)
デルタ航空のブースでは空港の案内表示のソリューションとして、「PARALLEL REALITY」と銘打ったパーナライズされた情報提示のデモンストレーションがありました。 このデモンストレーションでは、見る方向によって表示内容を変える特殊なディスプレイが使用されていました。 デモは次のような体験でした。 まず、行き先、言語、名前を入力したチケットを発券し、スキャナをかざして読み取ります。その後、空港を想定した広場に入ると、天井のカメラが個人個人を常に識別し、複数人が同じ空間にいても常に壁のディスプレイに自分に最適化された情報が提示されます。
あくまでもコンセプトとのことで、実際の空港への導入予定時期などについての言及 はありませんでしたが、問題解決手法として可能性を感じさせるデモンストレーションでした。
まとめ
VR/AR領域においては、特に消費者向けで軽量なARグラスが複数登場し、まさに今年がARの大きな節目の年となっていくことに期待が持てる内容でした。 また、6DoFスタンドアローンVR端末がOculus以外からも発表され、今後ますますVR体験がマジョリティの手に届きやすくなっていく予感を持ちました。 滞在中に米大手家電量販店Best Buyに立ち寄った際、Oculusシリーズのコーナーがありましたが、大人気ゆえに売り切れていました。 今後さらにVR/ARが身近な物になっていくだろうと思います。
今回、私たちVR研究室の両名ともにCES初参加だったのですが、VR/AR展示の充実ぶりや盛況ぶりを実際に垣間見ることができ、この領域にコミットしていくことの重要性を将来性とともに改めて感じることができました。