どうやら、デザインにUXは欠かせないようなのですが、何がどう大事なのか、分かるような分からないような……。
UXって何なの!? そもそもデザインって何なの!?
そんなモヤモヤを解消すべく、クリエイティブ素人のマルシオがDMM.comラボのUXデザイナーに突撃取材してきました。
突撃された人のプロフィール
デザイナーとは設計者である
マルシオ:今日は最近よく耳にするUXとデザインについてお話を聞きにきました。そもそもで恐縮ですが……デザインって何なんでしょうか?
イノウエ:相手がいるもの。誰かのためにつくるものです。「設計」を和英辞典で調べると「design」って出てきます。設計なんですよ、デザインって。
マルシオ:設計ですか……。デザインと聞くと、単純な私は「絵を描く」仕事を想像してしまいます。
イノウエ:ビジネスをデザインするとか、組織をデザインするとか聞きますよね。あれはつまり「ビジネスや組織を設計する」ということ。設計者として、誰かの課題を誰かのために解決する。それがデザイナーの仕事だと思っています。
ミナモト:異議なし!
イマサラだけど、UXって何?
マルシオ:(思ってたより奥が深そうだぞ……)そういう根本的なデザイン論って学校で習うものなんですか?
イノウエ:IT業界は変化が速いので、カリキュラムが追いついていない可能性はあります。ただ、プロダクトデザインの分野では、我々の仕事に近い部分が学べるかもしれません。ユーザーのことを見て、ユーザーを観察して。いわゆるUXですね。
ミナモト:UXはもともとプロダクトデザインから出てきた考え方ですから。
マルシオ:(出た! UX!)あのー……イマサラですけど、UXって簡単にいうとどういうものなんですか?
イノウエ:そもそもは「User eXperience(ユーザー体験)」ですよね。
ミナモト:UI/UXのような狭い範囲の定義で使われがちですが、もっと広い本来の意味で言うと、市場を調べることや文化を作ることもUXデザインの範疇なんですよ。
マルシオ:文化……?
ミナモト:「こんな人いるよね、こんなニーズあるよね、そのニーズは満たされていないよね、それならその生活にはまるようなサービスとプロダクトを作ったらいいんじゃないかな」という流れで、ある文化を想定して考える。
イノウエ:ものづくりにはたくさんの人が関わるから、どういう人がどういう生活をしていてどういうときに必要なのかをつくり手みんなで共有しなきゃいけない。客観的なデータを示すことで、みんなの向く方向を決めてあげることができるんです。
誰が、いつ、どこで、使うかを考えるために
マルシオ:少しだけ分かったような気になってきました。ちなみに、UXはいつ頃から世の中に出てきたんですか?
ミナモト:似たような考えは1980~90年頃からありました。メーカーで製品を作る人たちが使っていたもので、その後「UXデザイン」という新しい価値のための手法として登場し、10年ほど前からIT業界でも活発に利用されるようになった。
マルシオ:「ユーザーの声を聞いてものをつくる」って当たり前のように感じるんですが、UXが出てくる以前はIT業界はどういう考え方でものづくりをしていたんですか?
イノウエ:そもそもweb業界は新しい分野で、デザインを学んでいない人が多かったこともあり、周りの真似をしながら試行錯誤してつくっていた部分が大きかった。そうこうするうちにwebがデファクト・スタンダードになって、スマホが登場した。それまでは「家に帰ってパソコンの前に座る」ユーザーしかいなかったのに、そうじゃなくなっちゃった。どんなユーザーがどういう状況で使うのかをちゃんと考えないとサービスが作れなくなってきたんです。
ミナモト:見た目以外の部分にも踏み込んでサービスをつくらないと、多様化する利用シーンや利用セグメントに追いつかないんです。
本質をとらえてデザインする
マルシオ:確かに、消費者でさえ新しい技術やサービスに追いつくのに必死だった気がします。具体的に、「中身」を改善するにはどういうところから着手するんですか?
ミナモト:UXの一つ前の段階として、ユーザビリティがあります。これは使い勝手を良くすることを意味していて、商品価値の「マイナスをゼロにする」ということ。対して、「ゼロをプラスにする」のがUXです。
イノウエ:我々もその概念は使い分けて仕事をします。それはユーザビリティの改善なのかUXを改善したいのか。
ミナモト:例えば、購入フォームが分かりづらいというようなユーザビリティだけの問題なら、見た目の改善だけで解決できた。でも、「こういう人に使ってもらうためにはどうするべきか」とか、「ユーザーが実際にはつくり手の想定外のところで使っている原因を明らかにする」みたいな課題の場合、「ものを選ぶ=プルダウンかラジオボタンか」って固定した考え方では解決できない。「そもそもユーザーがものを選ぶって何だろう」っていうところに立ち返って、本質を捉えながらデザインしていく必要があるんです。
イノウエ:UXデザインもそうですし、これからのものづくりには、ものごとを抽象化して捉えるスキルが絶対に必要ですね。
ユーザーのニーズに合わせて機能を考える
マルシオ:DMMでは新しいサービスがどんどん生まれてますが、具体的にUXが生きた事例ってあるんですか?
イノウエ:DMM Okanは自分がUXデザイナーとして参画しました。家事代行って新しいサービスで日本でもまだ根づいていない。そういうサービスをつくるには、UXがとても効果的なんです。
マルシオ:どういう風にUXを取り入れたんですか?
イノウエ:まずは既存の計画通りにつくって、ユーザーテストをします。実際に使ってもらったら、そこでユーザーのニーズを聞き出す。「普段どうやって家事してますか?」とか、「こういうサービスだったら使えますか?」とか。そこから改善案をつくってまたユーザーテストをして……というフローを4周くらい繰り返してブラッシュアップしていきます。
マルシオ:UXが入ったことで当初の計画から何か変わったんですか?
イノウエ:サービスの中で担当者の顔を見せることになりました。当初の計画では担当者の顔出し予定はなかったんです。ただ、ユーザーにニーズを聞くと、「どんな人が来るかも分からないのに人を家にあげて家事を頼むなんて想像できない」と。ユーザーは単に家事を手伝ってもらいたいわけじゃなく、家事を手伝ってくれる「人」を探している。「人」に紐づくサービスなら、「人」を選べるように顔を出したほうがいいと考えたんです。
デザイン×UXの強み
マルシオ:見えない課題を見つけて解決してますね! ただ、それってデザイナーがやる必要はあるんですか? 他の人でもいいような……。
ミナモト:正直なところ、デザイナーがやらなきゃいけないわけではないです。ただ、デザイナーなら自分ですぐ形にできるんですよ。
イノウエ:プロダクトやサービスを形にする工程ってすごく抽象的で言葉で表現しにくいけど、デザイナーなら調査段階で具体的なイメージが浮かんでくるんですよね。イメージできてそれを自分ですぐに形にできるっていうのは大きな強みですね。
どうすればUX思考は身につくの?
マルシオ:でも、私みたいな素人が今日から突然UX思考になれると思えません。
イノウエ:まずは自分の中の課題を発見するところから始めてみてください。マルシオさんが今困っていることって何ですか? それを解決するにはどうしたらいいか、妄想でいいので考え続けてみてください。
マルシオ:妄想得意です。
イノウエ:次に、今あるものがどうしてこうなってるのかを考える習慣をつけてほしい。例えば、なんでホワイトボードは白いのか、学校の黒板は黒かったのに、とか。些細なことでいいから突き詰めて考える。検索すれば答えはすぐ見つかるかもしれないけど、検索しないでほしい。
ミナモト:自分で考えることが大切。
イノウエ:すぐにググっちゃうと自分で考える習慣が身につかない。仕事の答えってググっても見つからないことのほうが多いですよね。前例のない仕事をやらなきゃいけないこともあるし、当然会社の事情と擦り合わせながら進めなきゃいけない。だけど、会社の事情なんてググっても出てきません。
ミナモト:自分で考える力があるかどうかは本当に大事。考える力がある人は自分で解決できるし、変化の多いIT業界にいても自走して対応できますから。考えて実行する習慣を身につけてほしいですね。
イノウエ:逆でもいい。行動して考える。
ミナモト:実行と考えるは必ずセットです。
イノウエ:これからのデザイナーは本質を捉えられないと勝負できません。考えて実行する習慣をつけて、本質を見る目を育ててください。
まとめ
デザイナーってビジュアルをつくる仕事だと思い込んで突撃した無知なマルシオ。デザイナーに求められるものはもっと奥深くて、ものづくりの核心に迫るお仕事だということを学ばせてもらいました。
世の中にないサービスを次々と生み出しているDMM。
前例のないもの、ユーザーが満足するものをつくるためには、見た目だけでなく本質を追求する必要がある。
だからこそUXが求められているんですね。
とりあえず、今日から目の前の全てに対して「ナンデ? ナンデ?」の精神でぶつかっていこうと思います。 父さん(井上さん)、母さん(源さん)、ありがとうございました!