イノベーション本部は、経営層と直に議論して事業を開発
―――入社して1年で、2つの大規模プロジェクトのローンチに関わっているそうですね。
松縄:2020年の5月に入社して、その秋から関わっているのが朝日放送グループHDさんとの合弁会社「株式会社ONE DAY DESIGN(ワンデイ・デザイン)」のプロジェクトです。今年に入ってからは、注目度が高まっているオンラインクレーンゲーム事業の準備を進めてきました。2021年6月に株式会社オルトプラスさんとのジョイントベンチャーである株式会社DMMオンクレを設立し、代表取締役 兼 CEOに就任しました。
―――おめでとうございます。かなりスピーディーな展開ですね。
松縄:そもそも朝日放送さんとは「DMM.make AKIBA」に関する意見交換を行っていて、その流れで担当者間では以前から「新しいプロジェクトを立ち上げてはどうか」という声が上がっていました。それをイノベーション本部が引き継いだ形になります。
関わってから3〜4ヶ月で合弁会社を設立したので、確かにかなりのスピード感だと思います。それが実現できているのは、DMMらしいビジネスプロセスゆえですね。
―――DMMのビジネスプロセスと言いますと?
松縄:事業に関する経営判断に関しては、週に1回の戦略会議で話し合います。戦略会議には経営トップ7〜8人が出席し、事業責任者が入れ替わり立ち代わり新規事業も含むあらゆる提案や報告を行います。そして、ここですべてが決まります。
上場企業だと、部長会議や取締役会など、いくつかステップを踏まないと事業が進みませんが、DMMではトップとの距離が近いんです。経営者たちに直接、提案できる場があることがスピードの源だと思っています。
―――知りたい人が多いと思うので、もう少し詳しく教えていただけますか?
松縄:グループで約2000億円以上の売上を生み出してきたトップ経営者たちと、事業に関するアイデアや課題、解決案など、あらゆる視点からの意見交換を交わすことができるんです。ワンデイ・デザインの設立も、トップたちとスムーズにコミュニケーションを取ることができたからこそ、短期間で会社設立まで進めました。
会長の亀山もCOOの村中も、遠回しなコミュニケーションを取らないところにやりやすさを感じています。いい時は素直に「いい」と言ってくれるんです。ただし、「ここは違うな」という部分は絶対に納得してくれません (笑)。
腹落ちしながら仕事が進められるからこそ、「短期間でのジョイントベンチャー設立」というハードルの高いプロジェクトが実現できましたし、今後の自信にもつながっています。
事業が多くても、一つ一つに真摯に向き合っている会社
――― 入社前と入社後でギャップを感じたことはありましたか?
入社前は、事業を進めるかどうかの判断について、どの程度しっかりやっているのか掴みきれていませんでした。たくさんの事業を展開しているからこそ、どんな方法で判断しているのかが気になっていたんです。意外と言っては失礼かもしれませんが、入ってみてわかったのは、一つ一つの事業をかなりしっかりチェックしている会社だということです。
素早くしっかりチェックしてもらうために、シンプルでわかりやすいコミュニケーションが重要だと思うようになりました。また、新しい事業の提案をプレゼンする際は「合理的かどうか」を第一に考え、情報の肉付けの方法まで考え抜いています。議論する相手が会社のトップだとしても、事業の責任者として臆することなく対等に意見を言えることも重要なので、そのための準備は怠らないようにしています。
―――実際、どんな形で新規事業を展開しているのでしょうか?
“何でもやっているDMM” らしく、パートナー企業様からの引き合いが多いのが現状です。経営トップへ直接相談が入る案件も多く、「こんな話しが来ているんだけど、興味ある?」といった感じで聞かれることも少なくありません。
ただし、トップから強制的に事業を進めるように言われることはありません。私とチームで話し合って結論を出しています。決まったモノが下りてくるのではなく、事業化を検討、判断する段階からフラットに任せてもらえています。
―――責任重大な仕事だと思いますが、入社前はどんなキャリアだったのですか?
松縄:新卒で入社した企業では、プロダクト企画を2年半ほど経験した後、経営企画に関わるようになりました。経営企画の仕事は事業の現場とは距離があった上、社内調整役を求められることも多かったように思います。
将来のことを考えたときに、30代前半のうちに何かしらの事業を自分で成功させた経験を積んでおきたいと考え、転職したいと思うようになりました。
――― DMM入社の決め手はなんだったのでしょうか?
松縄:カルチャーマッチですね。社員のボリュームゾーンが30代ということで、それだけでもスピード感ある仕事ができそうだと思いました。最終面接でCOOの村中と話をした時に、この規模の企業のCOOなのにとてもラフで、話しやすかったことが印象に残っています。
直感的に感じたDMMの企業カルチャーは、その通りだったと感じています。DMMには自己保身で経営判断をするような人はいません。経営陣との距離感が近く、会話をする機会も与えられているので、とてもやりがいを感じています。事業に対して100%向き合うことができ、心身ともに気持ち良く仕事に集中できています。
チャンスに挑むことを楽しめる人と一緒に働きたい
―――どのような人材がイノベーション本部に向いていると思いますか?
松縄: ある意味、「心理的安全性がいらない人」ですね。「経営者視点を持っている人」と言ってもいいかもしれません。フラットな視点で事業判断などを下す必要があるため、自身のポジションが確約されるタイミングがありません。しかし、この不安定性を逆に楽しめるような人が向いていると思います。
「出世欲がある人」も向いているかもしれません。タフな業務も経験値にプラスになると「前向きに捉えて挑める人」にとっては、DMMには活躍の場がたくさんあります。キャリアアップすることもできるはずです。今はまだそのような経験がなくても、そういう仕事をやってみたいと思っている人も大歓迎です。
―――現在、一緒に働いているメンバーはどんな人たちですか?
松縄:今のメンバーは、法務や経営のスペシャリストが多いのですが、広報や人事といったバックオフィスにいるメンバーとも頻繁にやりとりをしています。こちらの意向を汲み取ってすぐに動いてくれるので、やりやすいですね。
ワンデイ・デザインのプロジェクトでは、事業をプロモーションすることに長けている広報担当が、積極的にこちらへコンタクトを取って事業広報を進めてくれました。組織を立ち上げる際は、人事が社内で経歴の合う人を探したり、その後の管理体制について即座にリスクの洗い出しなどを行ってくれます。どんな仕事でも、しっかりと自分ごととして捉え、自ら動ける…これもDMMらしさなのかもしれません。
―――働き方で気をつけていることはありますか?
松縄:スピーディーに事業開発を進めているので「長時間労働をしているのでは?」と思われがちですが、全然ブラックではないです(笑)。短い時間で効率良く働くように心掛けていますので、残業時間も少ない方です。出社や業務報告の仕方ひとつとっても、個人が効率を考えて出した結論は尊重し、無駄な忖度を発生させないように心掛けています。チームにも効率のいい仕事のやり方を積極的に伝えるようにしています。
今後の課題は、立ち上げた事業のスケールアップをしっかり達成すること。これまでとは異なる経験もさらに重ねていきたいと思っています。
構成・編集/平 格彦 取材・執筆/Yukie Liao Teramachi(funtrap) 撮影/高山潤也