はじめに
はじめまして。プラットフォーム事業本部の室木(@masa-m)です。 私はDMM.comのユーザーレビュー基盤の開発、運用、保守を行うチームでスクラムマスターをしています。 今回は、我々のチームで行っている心理的安全性の担保に役立つ取り組みをご紹介したいと思います。
なお、過去のユーザーレビュー基盤の変革シリーズは以下のリンクよりご覧いただけます!
今回のワークショップについて
前回は 主に人間関係(チームメンバーの行動・発言)に対して「チームメンバーがどのように思い、また考えるか」について議論しました。 そこで心理的安全性はチームメンバーの行動・発言が大切だということがわかりましたが、これだけでは、「偶然、集まった人が良かったから心理的安全性が高いだけなのか?」という疑問が残ります。
私はチームを運営するうえで実施している取り組みも心理的安全性を高めることに寄与していると考えています。 ですので、今回のワークショップではチームで行っている 「取り組みや仕組み」 のうち心理的安全性の影響が大きいもの、小さいものについてチームで考えていきました。
心理的安全性への影響が大きい取り組みと、小さい取り組みを出した手順と失敗談
最初にお伝えしたいのは、心理的安全性への影響が大きい取り組みと小さい取り組みを抽出して評価した方法は失敗だったことです。 失敗を踏まえたおすすめの方法についてはチームの心理的安全性の大きい取り組みと、小さい取り組みを出すおすすめの方法を参照してください。 何が失敗だったかを知りたい方は下記を参考にしていただければと思います。
失敗した手順
- チーム内で実施している「心理的安全性を高める取り組み」を自分で洗い出す。
- チームメンバーにSlack(チャットツール)を使ってレビューしてもらう。
- 洗い出した各取り組みについてアンケートフォーム(GoogleForm)を作成し、点数及び理由をメンバーに回答してもらう。
- 点数の高いものと、低いものについてディスカッションし意見をまとめる。
失敗した点は2点あり、手順の漏れとアンケートのとり方についてです。 その結果、以下の問題が発生しました。
1つ目は、手順4のディスカッション時に「最初に基準を合わせていれば違う点数をつけていた」 という状況になり、アンケートの点数に信憑性がなくなった。
2つ目はそもそも取り組みの点数差がつかず、同点が多くなりすぎてしまい、 心理的安全性の向上に役立つ取り組みがどれかわかりにくくなった。
失敗した原因の深堀り
1.心理的安全性の定義について認識合わせが不足していた
90年代から心理的安全性について研究を続けているハーバードビジネススクールの エイミー・エドモンソン氏は「下記の7つの項目に対してポジティブな回答が多ければチームは心理的安全性が高い」と提唱しています。
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引用:Google re:Work「効果的なチームとは何か」を知る / 心理的安全性を高める
アンケートを取る前に、上記に多くの影響があれば点数を高くつけてもらうなどの説明が必要だったと思います。
ディスカッションでメンバーによって「心理的安全性=安心感」であったり、「心理的安全性=発言のしやすさ」という偏りが見られたためです。
そのため、アンケートの段階では例えば「この取り組みは発言がしやすくなるわけではないから心理的安全性には関係がない」という点数の付け方になってしまい、基準が曖昧になってしまいました。
2.アンケートのとり方が問題だった
今回は「高い / やや高い / どちらとも言えない / やや低い / 低い」の5段階で点数を付けました。
しかし、これではどちらとも言えないを0点として、やや低いからはマイナス点に見えてしまいます。 「今やってる取り組みで、心理的安全性がマイナスになる取り組みがあれば、とっくにやめてる」という意見が出て、確かにと思いました。 ですので、心理的安全性に何かしらの影響を与えていると考えると0未満は付けづらく、結果「どちらとも言えない」未満の回答はほぼ得られませんでした。 また、そうなると実質「どちらとも言えない」より上の3段階となってしまい、取り組みの順位付けに差が出にくくなってしまいました。
チームの心理的安全性への影響が大きい取り組みと、小さい取り組みを出すおすすめの方法
失敗談を踏まえて下記手順をおすすめします。
手順
- チーム内で実施している「心理的安全性を高める取り組み」を自分で洗い出す。
- チームメンバーにSlack(チャットツール)を使ってレビューしてもらう。
- 心理的安全性の定義について認識合わせ
- 「取り組み」についてアンケートフォームを作成し(GoogleForm)、点数(最高点は10点)及び理由をメンバーに回答してもらう。
- 点数の大きいものと低いものについてディスカッションし意見をまとめる。
心理的安全性の定義における認識合わせについてはエイミー・エドモンソン氏の7つの項目を使ってチームで要見合わせを行い、 実施している取り組みは「どの項目がポジティブな回答になる取り組みか」を考えて点数及び理由を記載してもらうのが良いと思います。
最後のディスカッションで上記意見を踏まえてランキングを出すのに手間がかかりましたが、なんとか下記にまとまりましたので早速ご紹介いたします。
心理的安全性への影響が大きい取り組み
第1位 : チームプロダクトオーナーとの1 on 1
理由
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ディスカッションで出た意見
今のチームでは心理的安全性への影響は大きいが、 プロダクトオーナー自らが不満や疑問の解決に向けて行動やアドバイスをしてくれなければ、この取り組みの意味はない という意見もありました。
主に1 on 1で話している内容
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私のチームの「1on1を場としたメンタリングのスタンスと自己方法論について」はプロダクトオーナーがまとめているブログを参照してください。
第2位 : モブプロ
理由
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我々のチームのモブプロのやり方
大きく分けて2パターンあります。
1.困っている人がSlackでモブプロの絵文字を使って助けを求める。
スクラムをやっているチームではデイリースクラムやレトロスペクティブ等で困っていることをチームに共有していると思いますが、 我々のチームでは困ったことはリアルタイムで共有するようにしています。 そうすることで朝困っていても夕方のデイリースクラムまで持ち越すことがないため、リードタイムを短くできます。
2.プランニングで知識をチーム内に共有したほうが良さそうなチケットは、モブプロラベルを付けてドライバーを有識者に設定する。
チーム内の属人化をできるだけなくすため、特定の技術に関する知見が偏っている作業にモブプロラベルを付けて知識の共有を行います。 そうすることでスキルの高い人からの学びを得ることができます。
ディスカッションで出た意見
「他人に言葉や行動で、相手より優位に立ち、支配して喜ぶ」など、 相手を思いやれない人が存在するとモブプロはマイナスな影響のほうが大きくなるので 前提条件として心理的安全性がある程度必要という意見もありました。
ですので、人間関係が構築されていないチーム結成時から始める場合は「批判しない」など、「守るべきルール」があると良いかもしれません。
第3位 : 業務時間内での外部発信を後押しする
理由
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ディスカッションで出た意見
この取り組みはチーム内の心理的安全性を高めるとともに、社内の外部チームや社外から新たにジョインする人の視点で、 チームで何をやっているのか見えるようになり、チームに参加後の不安が減っているのではないかという意見もありました。
DMM.comでは社内公募制度があり他のチームに希望して異動することもできるのですが、我々のチームへの希望が比較的多いことにも繋がっているように思います。
ここまでは、すべての取り組みが心理的安全性に良い影響を与えていることを前提に特段「心理的安全性」に効果があった取り組みをご紹介しましたが、 次はチームで実施している取り組みで「心理的安全性」には影響が小さかった取り組みもご紹介したいと思います。
心理的安全性への影響が小さい取り組み
コミュニケーションルートの明文化(プロダクトチャンネル / マスタチャンネル / コミュニケーションチャンネル)
理由
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ディスカッションで出た意見
雑談のできるコミュニケーションチャンネルで発言している人に偏りがあり、 あまり発言しない人にとっては、明文化されていてもそもそも利用機会が少ないのでそれほど影響を感じない。
マイナスではないが、人によっては影響がないという考えがあり、点数は低くなりました。
メンバーの体制 / 役割 / 責務箇所についての明文化
理由
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ディスカッションで出た意見
開発者としては最初から役割が明確になっていたため、自分に関係しない仕事が回ってくることがないので意識をしていないが、 もしチーム発足時に明確になっておらず、関係があるかわからない仕事が流れてきたらモヤモヤしてそう、という意見がありました。 こちらは意識していないので点数の付けようがないという結果になり点数が低くなりました。
チーム内表彰
理由
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ディスカッションで出た意見
不定期でプロダクトオーナーとスクラムマスターが1000円ずつ出し合い、表彰者に美味しいご飯を食べてもらおうという企画ですが、 あることは嬉しいけど、ないからといって不安になったり発言がしにくくなることは特にない。 やる気にはつながるが心理的安全性の視点で考えると影響は軽微という話がありました。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回は、我々のチームで行っている心理的安全性の担保に役立つ取り組みを ご紹介させていただきました。 少しでも、参考になれば幸いです。
最後に
私の所属するプラットフォーム事業本部 Customer Decision Support Teamでは、一緒に働いてくれる仲間を探しています。 それぞれの得意分野を活かしながら、みんなでフロントエンドからインフラまでフルスタックを目指しているチームです。 少しでもご興味のある方はぜひご応募ください!