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ゲームにおける世界観の作り方〜文豪とアルケミストの場合

ゲームにおける世界観の作り方〜文豪とアルケミストの場合

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はじめまして!

DMM GAMES 『文豪とアルケミスト』チームの前田と申します。

私は、DMM GAMESで提供しているゲーム『文豪とアルケミスト』において、開発時のコンセプトアートから実際にゲームで使われている背景イラストまでの制作を担当しております。

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ゲームや映画などの制作では、コンセプトアートと呼ばれるものを用意することが珍しくありません。
『文豪とアルケミスト』の開発チームでも、企画が始まってから多くのコンセプトアートを制作しました。
今回はゲーム開発におけるコンセプトアートの役割や制作過程、『文豪とアルケミスト』の世界観がどのように作られていったのかをご紹介いたします!

そもそもコンセプトアートってなに?

まず、コンセプトアートについて説明したいと思います。

世の中に数多くある作品にはそれぞれ 「ファンタジー」「SF」「現実世界での学園生活」などといった、世界観があります。
世界観は、「作品の舞台」と言い換えることもできると思います。
一つの世界観を構成する要素や情報は様々にあり、決めなければいけないことがたくさんあります。

主人公はどんな場所で活躍するの? 雰囲気は明るい? 暗い? 現実世界? ファンタジー?
ファンタジーならどんなファンタジー? 全体的な色調は? どんな建物が建っている?

などなど……。

また、
キャラクターはどういう行動をするの? どんなイベントが起こるの?

といったシチュエーションに関係することも具体的にイメージを固めていくこともあります。

このような様々な情報が詰め込まれた一つの世界観をビジュアルとして表現したものが「コンセプトアート」なのです。
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コンセプトアートの役割

コンセプトアートには主にふたつの役割があると考えています。

まず、「作品の世界観を決めていく役割」です。
先ほども書いたように、世の中はたくさんの作品で溢れています。
どんな作品でもゼロから新しく作る段階では世界観はしっかり決まっていません。
例えば、「細かいことは決めてないけど、カッコいい魔法が使えるゲームにしたいな~」といったように抽象的なイメージから検討が始まることもあります。

作品の世界観を決めるには、「時代性」「色調」「その世界で使われている技術」「文化」「種族」などなど、
その世界観を構成する情報を具体的にしていく必要があり、『文豪とアルケミスト』でコンセプトアートを制作したのもそのためです。
コンセプトアートの制作では、「今から作るゲームに合うデザインはどんなものだろう? それをどうすればカッコ良くできるだろう? どうすればユーザーは楽しめるだろう?」
と常に問いながらイメージを描き起こし、チームメンバーと確認します。そして、必要に合わせてさらに描き直すことを繰り返し、世界観を構成する情報を決めていきます。

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コンセプトアートがあると、イメージをチームメンバーと共有できて話もしやすい!
ゲームを開発する時は、たくさんのキャラクターや背景といったイラストに始まり、UIやゲームの公式サイトなどまで、大勢で協力して同時に作っていくことになります。 だからこそ最初に世界観を決めることにより、それらの制作も円滑に進むようになります。
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「この作品の世界観とはこういうものだ!」というのを決めていきます

もうひとつは、「決まった世界観の内容を皆に伝える役割」です。
先ほども書きましたが、ゲームの制作では多くのメンバーが関わってきます。
その際「これから制作していくゲームがどのようなものなのか」について、メンバー間で共通認識があるほうが、よりスムーズな開発ができます。
『文豪とアルケミスト』の開発でも世界観をビジュアルで表現することで、メンバーが同じ認識を持つことができ、それぞれの制作の方向性をしっかりと合わせられました。

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他にも制作に関わる様々な人に共有し、イメージの認識を合わせています

文豪とアルケミストではどういうアートを描いたの? ~開発の大まかな流れ~

ゲームの企画が立った段階では、具体的に世界観は決まっていませんでした。 しかしながら「近代日本と歯車を合わせた世界観にしたい」「戦闘のあるゲームにしたい」「文学に関するゲームにしたい」というイメージは決まっていたため、 それを基にして話し合いながら、風景やキャラ、敵、武器などのアイデアを描いていきました。

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最初期の頃に描いていた背景や敵キャラのアートの一部 最終的に完成した作品に受け継がれている
要素もあります

世界観の監修を担当していただいたイシイジロウさんをはじめ、チームメンバーにアドバイスや意見をいただき、描いては描き直して、また皆で確認して……という作業を繰り返しました。そのうち「文豪」「図書館」「本の中の世界」などなどいろいろな設定が定まって、『文豪のアルケミスト』の世界観が決まっていきました。

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いろいろな図書館の案 ファンタジー寄りなものから現実に近い雰囲気のものまで、これらのほかにも図書館のアートを様々に制作していました

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コンセプトが固まった敵キャラアート

イラストやUIなどの制作は、でき上がったコンセプトアートを基に行われました。
(歯車などの小物パーツや、背景、食事メニューの一部、敵イラストの一部は自分が担当しています) f:id:dmmlabotech:20180509150313j:plain ゲームに登場する背景や敵の中には、そのままコンセプトアートを清書したイラストもあります。
開発の大まかな流れはこんな感じです。

文豪とアルケミストの世界観製作の過程 ~「安全な場所」と「危険な場所」の創出~

次は『文豪とアルケミスト』を構成する特徴的な部分が、アートによってどのようにして決まっていったのか、具体例を紹介します。

『文豪とアルケミスト』の世界観は、「安全な場所と危険な場所のギャップ」が特徴となっています。
キャラクターが生活する施設のような安全な場所と、敵と戦闘が行われる危険な場所で大きく見た目が変わっているのです。

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実際にゲーム内で使われている背景イラストの比較

このような違いを持たせたかったのは、
『文豪とアルケミスト』は複雑な操作が不要な戦闘ゲームというコンセプトを踏まえたうえで、
「非戦闘時と戦闘時の違いをしっかり出して、分かりやすいゲームにしたい」
「操作する項目が少なく、自動で進む戦闘ゲームなので、そのぶん見た目の大きな変化によってメリハリを感じて楽しめるゲームにしたい」
という思いがあったからです。

それに加え、事前に「舞台は近代日本」「戦闘フィールドは『有碍書(ゆうがいしょ)』という本の中の世界」と決めていたので、
明治時代・大正時代・昭和時代をイメージしたレトロで温かみを感じる図書館などのアートとは対照的になるように、
敵と戦う戦闘フィールドのアートを作っていきました。

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コンセプトが固まった図書館のアート。ゲームで使われているものは、このアートを調整して清書したものです

最初はとにかく現実世界との違いを強調するため、フィールドに巨大な歯車を配置したり、建物に文字を描いたりしました。

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最初の頃に描いていた戦闘フィールドのアートのなかの1枚

そういったアートをチームメンバーやイシイジロウさんに確認してもらうなかで、
「もっと本の中らしい世界にしたい!」
「文字の表現を推したらどうか?」
「敵によって壊されていく本の世界」
と、どんどん意見やアイデアが生まれ、コンセプトが決まっていきました。

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コンセプトが固まってきた段階での戦闘フィールドアート
背景オブジェクトのシルエットの印象の違いと色調の違いによって
現実の安全な場所と本の中の危険な場所の違いをさらに分かりやすくしようとしています。
文豪たちが過ごす施設には円形を意識した安全な印象の部分を多くし、色調も温かみがあり落ち着くものにしています。
一方、本の中の世界である戦闘フィールドでは、建物や文字を使ってトゲトゲした部分を多くして危険な印象を持たせ、色調も非現実的なものにしています。

こうして施設や戦闘フィールドのアートが完成し、世界観が固まっていき、

これを基に、ゲームに必要な素材を作成していきました。

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アートで決まったコンセプトを基にしながらゲーム画面や仕様を考慮し制作した、実際にゲーム内で見られる背景画

仕事で絵を描く時の心構え

ここまで『文豪とアルケミスト』のコンセプトアートについていろいろと書かせていただきました。
実は、アート制作で仕事に携わったのはこの作品が初めてで、自分はまだまだ技術も経験も足りてないと実感しております。
それでも、自分なりに仕事で描くことに対する心構えを持って制作し続けています。

それは
「絵を描くのではなく、世界を作るという意識を持つ」
ことです。

コンセプトアートの制作をはじめとしたゲーム開発における絵の仕事というのは、ゲームの世界そのものを作っていく仕事だと思います。
なぜなら、ゲームを遊ぶ時にプレイヤーが楽しむのは「キャラの絵」でも「背景の絵」でもなく、 性格や声やバックボーンがあり、絵という表現で可視化された「ある創造の世界の中に存在しているキャラクターそのもの」であり「キャラクターがいる場所そのもの」だと思うからです。
確かに、ビジュアルのクオリティはゲーム全体のクオリティにも大きく影響を与えると思います。 しかし、本当に大切なのは一枚の絵として優れているかではなく、世界を構成する要素として優れているかどうかだと思います。

だから私はゲームの制作で絵を描く時には常に、
「良い絵を描きたい!」ではなく
「良い世界を作りたい!」と思って仕事をしています。

そのため、例えば建物を描く時は画面の中で建築し、キャラが活動する場所を実際に作っているような気分で制作します。 そういう心持ちで、今後も素敵な世界を持つゲームを作っていきます!

以上、長々とお読みいただき、ありがとうございました!!


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■「文豪とアルケミスト」公式サイト

bungo.dmmgames.com