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アニメ『ブルーピリオド』制作サイドストーリー②:好きな作品だからこそ、生まれた「葛藤」や「変化」

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  • 峯田大夢(みねた ひろむ)声優

    2014年にゲームアプリ『モンスターストライク』で声優デビュー。その後もゲーム、アニメ、舞台などで多くの作品に出演。2021年にはテレビアニメ『セスタス -The Roman Fighter-』のセスタス役でアニメ初主演。同年10月1日に放送開始のアニメ『ブルーピリオド』でも主人公・矢口八虎役を務める。

  • 松本拓也(まつもと たくや)合同会社DMM.com アニメーション事業部プロデューサー

    2016年、DMM.comに入社。経営企画室、ライツ管理部を経て、2018年にアニメーション事業部に異動。2019年5月から現職に。2021年10月1日から放送を開始したアニメ『ブルーピリオド』のプロデューサーも務める。

主人公が美術に目覚めて青春を捧げる物語『ブルーピリオド』は、講談社「アフタヌーン」で連載中の漫画。2021年10月からアニメの放送がスタートし、その制作は「DMM pictures」が手掛けています。

作り手の並々ならぬこだわりが詰め込まれた本作の魅力をお伝えすべく、制作側のサイドストーリーを何回かの記事にわけて紹介します。

第二弾も、主人公の矢口八虎を演じる声優の峯田大夢さんと、本作のプロデューサーで当社アニメーション事業部所属の松本拓也との対談。原作の内容とシンクロするように、アニメ版の制作にも大きな葛藤や喜びがあったようです。

前回の制作サイドストーリー①はこちら↓

アニメ『ブルーピリオド』制作サイドストーリー①:友人だけど、「妥協のない」主役とプロデューサー

 

 

すでにファンが多い作品のアニメ化だからこその「葛藤」や「不安」

ーー私も『ブルーピリオド』が好きだからこそ聞きたいんですが……この作品には、好きなことに向き合う「葛藤」や「喜び」が描かれていますよね。同じように、この作品や仕事が好きだからこその「葛藤」があったのでは?

峯田:確かに。できる限り八虎に近い状態をつくっていてこともあって、八虎と同じくらいたくさん葛藤したと思います。

八虎に近づくため、腕に蕁麻疹(じんましん)が出てしまう場面では、蕁麻疹を出すために腕を掻きむしったりストレスを与え続けたりしました。そしたら本当に、軽めの蕁麻疹が出たんです。みんなに話したら「それはダメでしょ!」と。最終的にストレスが胃にきてしまい、収録に支障をきたしたらダメだと思って病院に行きました(苦笑)。

松本:僕も思わず、「マジか、何してるの!?」と止めましたよ。心配になるから、もうやめなさいね。

峯田:お騒がせしました……。

ーー松本さんも「葛藤」はありましたか?

松本:大きく2つありました。1つ目はやっぱり、原作が好きだったからこその葛藤です。制作者サイドだけでなく、読者・視聴者サイドの気持ちも分かるからこそ、それぞれのニーズと僕の感覚が合っているのかそのニーズを満たせるのか、ずっと考えていました。さらに、原作ファンのみなさんだけでなく、アニメから入った人を原作に引き込むことも考えなければなりません。とくに『ブルーピリオド』は期待値が高く、全世界のユーザーが楽しみにしていますから。

僕の中では原作がすべてであり、「正」であると思っています。アニメは決められた話数の中で物語を描かなければならないため、基本的にアニメ作りは原作から話を「抜く」作業なんです。「原作のあるアニメはシナリオ作りが楽そう」と思われるかもしれませんが、アニメーションの中で物語を上手く成り立たせるのはすごく難しいんです。何を軸にして作品の魅力を伝えるべきなのか、それを決める作業は苦労しました。

ーー結局、アニメでは何を軸にしたんですか?

松本八虎の「成長」と、彼を取り巻く「青春群像劇」にスポットを当てています。なので、八虎が藝大を目指すために予備校に入り、まさしく「葛藤」するパートに重点を置いてます。原作で八虎が美術部に入部して、色相環や遠近法といった絵の基本を理解していく前半のパートは割愛しています。

2つ目の葛藤は、決められた予算の中でアニメファンのみなさんに楽しんでもらうための、宣伝施策や協力して頂ける会社さんとの取り組みを考えること。それぞれの施策に対して、果たしてこれで喜んでもらえるのだろうか?と考えていました。気づいたらあっという間に時間が過ぎているほど、とにかく作品と向き合っていました。みなさんがどこまで作品を楽しんでくれるのか、そこが大きな楽しみであると同時に不安でもあります。

峯田:楽しみであり不安でもあるのは僕も一緒です。

八虎は読者が自分に置き換えて感情移入することがいちばん多いキャラクターだと思っています。僕自身もそうだったからこそ、自分をさらけ出して演じることができました。

だからこそ、多少なりとも僕の色が八虎についてしまっていると思うんですよ。読者のみなさんが自分の色を置いていたのに、そこへ僕が「八虎の色はこれ!」と置いてしまっているようなもの。なので、原作のファンが感情移入できるのか、不安はありますね。とはいえ、まずは見ていただいて、何か感じてもらえるだけでもうれしいですけど。

たくさんの人の「支え」があったからこそ、役に徹することができ、細部までこだわれた

ーー不安とは逆に、本作の制作で感じた「喜び」は何でしょう?

峯田たくさんの人たちの支えで八虎という役に徹することができたことが喜びですね。『ブルーピリオド』に関わって、絵を描いている人たちの努力に触れ、改めて心から尊敬しています。アニメーションの制作も絵を描く人たちの努力に支えられていますからね。絵を描く人たちが道を作ってくれたからこそ、八虎という役を全うすることができました。感謝しかありません

松本:僕の喜びは、好きな原作のアニメ化に携われたことですね。プロデューサーとして、すごく素敵なことだと感謝しています。視聴者やファンのみなさんが喜んでくれることも僕の喜びです。喜んでくれているツイートなどを見かけると、それだけで報われます。僕らのようなビジネス側のプロデューサーって、どうしてもお金の話題が付きまとうんですが、今回に限ってはそれを度外視した企画をもいろいろ仕込んでます。すごくこだわっているので、それが視聴者のみなさんに伝わったらうれしいですね。

 

ーー『ブルーピリオド』という作品だからこそ、みなさんのこだわりを引き上げている気がします…

松本:それはあると思います。青い渋谷を背景にしたティザーPV、渋谷スクランブル交差点前の大看板、美術家・山口歴さんとのコラボによる第2弾キービジュアル、キャラクターグッズ……世の中に出ているもののひとつひとつにかなりこだわっています。僕だけでなく制作スタッフ、そして原作者の山口先生を含め、細部まで意見を出し合いながら進めました。

峯田:山口先生はアフレコ現場にも来てくれましたからね。しかも、ほぼ毎回。演技もほとんど見てくれました。

松本:コントロールルームでその都度、「ここはどういう気持ちで発した言葉ですか?」などと確認できたのは本当にありがたかったです。

峯田:宣伝の企画で絵を描いている時も、「応援に行きます!」とわざわざ見に来てくれました。なんとなく山口先生って、八虎とかぶる部分があるんですよ。だから収録中も一緒に戦ってくれている感じがして、現場に来てくださって心強かったです。

 

自分の「好き」や「選択」を突き詰めてがんばれば、どんな結果でも意味がある

ーー最後の質問です。アニメ『ブルーピリオド』という作品と向き合うことで、自分自身に「変化」はありましたか?

峯田声優としてのキャリアに色がつき始めましたね。

松本:おぉ、いい言葉!

峯田:頭も体も心も削って、自分をさらけ出して演技をすることは正直、初めての体験でした。この作品に出られたことは、人生の中ですごく大きなことだと思っています。好きなことと向き合い続けていくのは難しいですが、それでも「好き」を突き詰めていきたいと再確認しました。

松本:僕は、いっそう自分に自信を持ってがんばろうと思えるようになりましたね。今まではいろんな場面で、「まあいいか」「仕方ないか」と諦めたり妥協したりしがちだったんですよ。がんばってもいい結果がついてこないことはありますし、客観的に見て良い結果でも、主観的に見るとそうじゃないこともあるじゃないですか。

だけど、いろんな選択の中から自分が選んで一生懸命やった先にある結果は、どんな形であれそんなに悪いものではないかもしれないなと。とくに仕事に関しては、自分が納得いくまで一生懸命にやり切ることに意味があると思えるようになりました。

 

※アニメ『ブルーピリオド』の詳細は公式サイトをご参考に。

 

企画/常見真希 構成・編集/平 格彦  取材・執筆/阿部裕華  撮影/高山潤也

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