DMMグループの一番深くておもしろいトコロ。
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非上場のDMMが「持株会」をスタート!その裏に秘められた亀山会長の想いとは

DMMグループの一番深くておもしろいトコロ。

このたびDMMはグループ社員向けの持株会を新たにスタートしました。どのような想いでこの制度を始めるに至ったのか。実際に社員はどのようなメリットを享受できるのか。発案者である会長の亀山と、制度設計を担当したCFOの粕谷に話を聞きました。

  • 亀山 敬司(かめやま けいし) 合同会社 DMM.com 会長

    1961年石川県生まれ。19歳でアクセサリー販売の露天商から起業家人生をスタート。 1985年にレンタルビデオ店を開業。 1999年にDMM.comを設立。現在は、DMMグループの会長として、動画配信、アニメ制作、オンラインゲーム、英会話、FX、株、太陽光発電、3Dプリンタ、消防車、救急車の製造、ベルギーでサッカーチームの運営など、60以上に事業を展開している。

  • 粕谷 佳宏(かすや よしひろ)合同会社 DMM.com CFO(最高財務責任者)

    PricewaterhouseCoopersにて、法定監査、SEC基準監査などに従事。その後ネットベンチャーでのIPO経験を経て、フリーランスに転身。M&AのDD、内部統制運用支援、IPO準備支援などのコンサルティング業務に従事。2009年、DMMグループに入社。財務担当としてFX事業立ち上げ期の経営参画、M&A案件関与、管理会計の仕組み構築など様々な案件に従事。 2018年、DMM.comのCFOに就任。財務部門、法務部門を管掌。MBA/ 公認会計士

資産家になりたいわけじゃない。DMMの利益を社員に還元したい

上場企業では一般的だが非上場のDMMがついに持株会を始めたという。会長の亀山はなぜ持株会を始めようと思ったのか。

持株会のスタートにあたり、グループ全社4,400人の従業員に向けて、動画でメッセージを発信した

亀山 非上場のDMMが、なんで持株会なんて始めるのかっていうと、会社の利益を社員に還元したいと思ったからなんだよね。ビデオレンタル屋の頃から数えると、うちの会社が立ち上がって40年以上経つわけで、これまでは利益が出たらそれを新しい事業にガンガン投資してきた。

そのスタンスは今でも変わってないよ。けど、ここ10年はそれでも利益がだいぶ残るようになってきたんだ。俺は商売が好きなんだよ。だから、そこに必要な利益を稼いで、投資をしてきただけであって、別に資産家になりたいわけじゃない。DMMが一定の利益を生むようになったんだったら、このタイミングで持株会を始めるべきかなって。

そもそもの話をすると、創業間もない頃から会社を支えてきてくれた社歴の長い社員に、何かしらの方法で還元できないかなって考え始めたのがきっかけなんだよね。うちは実力主義だから、年齢だけで役職や給料を決めたりしない。なかには下がっちゃうやつもいるわけよ。厳しい判断かもしれないけど、組織の健全性を保つためにはやらないといけないことなんだよね。

ただその一方で、そいつらが頑張ってきてくれたおかげで今のDMMがあるとも言えるじゃない?でも、優秀な人間がどんどん入ってくるから、そこを給料に反映するのは難しい。だから今回、持株会という形で還元する仕組みにしたんだよね。

赤字にならない限り、株価は上がり続ける

亀山 DMMは非上場だから本来は株価なんてないんだけど、持株会ではDMMグループ全体の「純資産」を基準に価値を判断することにした。例えば、会社が黒字だったら、利益の分だけ純資産の数字がちょっとずつ増えるわけよ。会社の利益が純資産の10%だったら、株価もそれに応じて10%上がる。つまり会社が黒字である限り、株価は上がっていくわけだ。

株価算定の仕組み

ただ、今回の株は議決権とか配当金はないんだよね。買った株はしばらく持ってもらって、在籍期間の途中、もしくは会社を辞める時に売ってもらうことになる。その時点で、株価が上昇した分だけ得をするよっていう仕組みだね。

俺は、時間が経てば経つほど、うちの株の価値は上がっていくはずだと思っているけどね。ちなみに、ここ10年で純資産は4倍くらいに増えていて、今回の持株会のルールで言ったら今の株価は4倍。だいたい15%くらいの利回りかな。これまで赤字に転落したことだって一度もないし。

いやもちろん、事業に対する投資が優先であってさ、これまで通りの利回りを絶対に約束できるわけじゃないけどね。最近だと、DMMTVとか、DMMオンラインクリニックとか、新しい事業がスタートしているから、もしかしたら来年の利回りはもっと悪いかもしれない。でも、あくまで長期的に考えてほしいかな。それでも市場で株を売り買いするよりは、よっぽど手堅い資産形成になると思うけど。

非上場企業だからこその強み

従業員から制度に関する質問を募り、「年の途中で拠出額を増やすことはできるのか」など
CFOの粕谷とともに動画で回答した

亀山 ただ、今回の持株会の制度って、うちが非上場だからできたことなんだよね。だって純資産の増減によって株価を決めるなんて仕組みは、上場企業だったら株主総会で否決されて終わりだから(笑)。投資家にとって株価は上がってナンボなわけじゃん。市場に判断させればもっと高い株価がつくかもしれないのに、わざわざ純資産を基準にする理由がないからね。だからある意味、俺がオーナーだからこそできる独断っていうかさ。

まあ、終活みたいなところもあるんだよね。大き過ぎる資産って、残された家族にとっては負の遺産になるわけよ。努力しないで大金を手に入れたら家族がおかしなことになるかもしれないし、金目当ての怖い犯罪だってたくさんある。相続財産をどう減らすか、最近すごく考えてるんだ。でも、どうせ減らすんだったら社員たちに還元したいんだよね。

俺がぽっくり逝った時のことはまだ全然決めてないけど、仮に会社をまるごと上場企業に売却したら、もしかしたら株価が5倍、10倍になるかもしれない。そしたら、持株会で株を買ったやつらはみんな葬式で、「会長、ありがとうございます!」って泣いて喜ぶんじゃないかな(笑)。 

社員が安心して株を買えるような仕組みを実現

持株会の制度設計をおこなったCFOの粕谷は、会長からアイディアを聞いた時、なんとしてでも形にしたいと思ったという。また制度をスタートするにあたってはどんな苦労があったのか。

亀山会長から持株会のアイデアを聞いたとき、粕谷CFOは率直にどう思ったんですか?

粕谷 2022年の8月あたり、ちょうど1年くらい前に会長から話を聞いたんですけど、2つ思ったところがありました。ひとつは、ずいぶん気前が良いな、と(笑)。亀山会長はDMMのオーナーであり、これまで会社の利益は会長1人のものでした。今後は利益の独占を続けるのではなく、社員の皆にも分けてくれるというわけですからね。

そしてもうひとつ、実現するのにかなり手間がかかるだろうなとも思いました。ただ、これは社員全員にメリットのある制度です。私としては、なんとしてでも形にしたいプロジェクトでした。

そうすると、苦労した点はどこですか?

粕谷 当初の想定外ではあるのですが、結果的に一番苦労したのは、株価の算定ですね。今回の持株会の大きな特徴は、DMMグループ全体の純資産額をもとに株価を評価する点です。正確な株価を弾き出すためには、約100社ほどあるグループ会社の純資産をすべて連結する必要があります。これまでもDMMグループの連結財務諸表というのは定期的に作っていましたし、連結というのは要するに足し算するだけですから、簡単にできるだろうと楽観視していました。

管理会計を担当しているチームに、「普段の仕事の片手間でいいから算定をお願い!」と気軽に頼んでしまったんですけど、実際に作業を始めてもらうと想像していた以上に煩雑でした。2023年の3月下旬から始めて、ようやく終わったのが2023年の8月下旬。本当についこの間ですね。

こういった制度を作るからには、社員の方々には極力リスクがないように設計されているんですよね?

粕谷 そうですね。会社の純資産を株価の基準にした理由も、そこにあります。DMMグループが毎年利益を出す限り、純資産は増え、それに応じて株価が上昇していく仕組みです。私たちは60以上の事業を展開していて、大きな収益を生み出している柱が何本かあります。残念ながら、そのうち1本が倒れてしまっても、他の事業でカバーできるようになっている。つまり、利益が確保しやすい構造になっているので、そう簡単に赤字に陥ることはありません。

長年会社を支えてくれた人ほど還元される

持株会の仕組みを聞いていると、個人的には買わない理由がないんじゃないかって思うんですけど……。

粕谷 正直、会社の純資産金額に基づいた株価で購入できること自体、めちゃくちゃお得ですね。株価の評価指標のひとつに、PBR(株価純資産倍率)というものがあります。簡単に言ってしまえば、1株あたり純資産の何倍の株価で取引をされているかを表す指標です。

例えば、会社Aが持つ純資産が100円だとしましょうか。その時、会社Aの株価が200円だったら、PBRは2倍ということになります。株価は業績以外にもさまざまな思惑で上下するので一概には言えませんが、基本的に成長性のある企業だったらPBRは1倍以上になるケースが多いでしょう。

おそらくですが、もし今のDMMが上場したらPBRは1倍を超える可能性が高いと思います。それだけ業績が良く、まだまだ成長見込みもあるということですね。今回の株は、純資産額に応じて株価が決まるので、つまりPBRは1倍。本来の価値を考えたら、まさに大盤振る舞いじゃないでしょうか。

在籍期間の長い人ほど買える額も多くなると聞いています。

粕谷 制度開始の1年目のみ、勤続年数に応じた特別枠を設けています。今回の制度では、通常枠として株を購入できるのは年収の10%までです。それに加えて、3年以上勤務の社員は10%、5年以上勤務の社員は20%、10年以上勤務の社員は30%、そして20年以上勤務の社員は40%というように、購入できる額が増えていきます。

 初年度に限り、勤務年数に合わせて購入できる割合が増える

もし、この持株会の制度を昔から運用していたら、勤続年数が長い社員はもっと多くの株を買うことができたはずです。亀山会長としても、今回の制度はそういった彼らに対する還元の意味合いも強い。ですから、その点も加味して制度の設計を行っています。

最後に、検討している社員の方々に向けて一言お願いできますか。

粕谷 投資の世界に絶対はありませんが、それでも通常の株式取引を行うのと比べて、DMMの持株会はかなり安定性があると思います。興味があればぜひ、無理のない範囲で参加してもらえたら嬉しいです。

 

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