この記事は、DMMグループ Advent Calendar 2022の記事です。
こんにちは。「デザイン部」というデザインアプローチを軸とした横串部門で部長を務めております。齊藤 卓真と申します。昨年のアドベントカレンダーから早一年。
今年の投稿は、直轄する「デザイン部」の運営に加え、「社内各所にあるデザインチームのコンサルティング」等々の中で推進してきた「DMM.comにおけるデザイナーが担う役割の拡張・組織的な対策アプローチ」について、直近1年分のピックアップを紹介させていただけばと思います。
横断プラットフォームデザイングループ組成
DMM.comでは各種サービスで共通利用するプロダクト群があり(例えば、ログインページや購入画面などを目にしていただいた事がおありかもしれません)、これらを社内ではプラットフォームプロダクト(以下、PFプロダクト)と呼称しています。
デザイン部は「全社の新規事業プロダクトや運営体制構築の支援」に軸足を置いてきましたが、ここ2年程はPFプロダクトについて相談をいただく機会が増えていました。
その際、よく挙がるのは「○○をするための機能を作りたいが、PFプロダクト全体で考えた時、プロダクト機能群のどこで提供する事が正しいのか?」という問いでした。
さらに紐解いてみると「 ユーザーにとある情報を届ける際に、本来のDMM.com全体を一つのサービス群としてUXを俯瞰できたなら、もっと最適なアプローチがあるのではないか?」というさらに広い範囲へ課題意識が向いていることが見えてきました。
PFプロダクトには多種多様な機能とそれを管轄する部署がありますが、一部のデザイナーが「ユーザーから見た際の全体感」を把握しつつ機能群に向き合ってくれていましたが、負荷も高く改善アプローチを定常的に行えるような組織形態ではありませんでした。
その状況を打開すべく、2022年の春に「PFプロダクトデザインの専門グループ」をデザイン部配下に組成。もともとPFプロダクトヘ支援をしていたデザイン部メンバーに加え、一部のPF機能専任のデザイナー達にも所属を移してもらい、さらに採用での増員も行い体制を拡充しました。
個々のサービスとPFプロダクトの連動
PFプロダクトにおける機能群の特徴として、それらだけではUXが完結しないケースが多く、約60のサービスを展開するDMM.comにはデジタルプロダクトが多く、その各サービス利用の一連のUXの中に組み込まれる事が多いためです。例えば「サービスサイトご利用後(例 : 商品を選ぶ)、PFプロダクトで購入いただく(例 : 会員登録し購入手続きをする)」といったイメージです。
デザインする現場からすると、PFプロダクトの難しさは
- 既存機能の成り立ちの理解が必要。
- 関係する部署やサービスが多く、影響範囲の考慮が多岐にわたる。
- 同時期に複数の施策や開発が並行するため、タスク管理や分担設計が大切。
- 主要サービスを含めた横断的なUX観点が必要。
が主に挙げられ、「PFプロダクトデザインの専門グループ」では、この難易度の高いミッションに挑むために、デザイナー間の共有と連携をとても大事に運営しています。ただこれだけで、一連のUX設計を実現できる訳ではありません。
横断的なUXの実現には「特定のサービスを運用しているデザイナー」の皆さんの協力も必要でした。デザイナーの所属形態もDMM.comではいくつかあり、デザイン部のような横串組織からアサインしているケースもあれば、事業部のような縦割り組織に直接所属しているケースもあります。
PFプロダクトと繋がるサービスプロダクトが「DMM.comサービス間を跨いだUXを実現する為 」には連携することの意義を理解してもらう事が必要があると考え、「プロダクトデザイナービジョン」を提唱しました。
今年の大規模開発では、このビジョンをベースにしたプロジェクトチームを立ち上げました。
プロダクト管轄で見た組織図では遠くでも、プロジェクト軸で体制を設計する事で各所のデザイナーが連携してくれ、「広い範囲の情報連携、大きなカスタマーサクセスフローの可視化や、サービス側とPF側の双方からの歩み寄りによる機能要件調整 等々」を体現してくれました。
これらは近年のDMM.comで優先してきた、縦割りをベースにした「個々のサービスプロダクト単位でのコミットを高める組織構造」の中でケアしきれていなかった、横断的な連携が実現できたアクションであり、協力いただいた社内関係各所の皆様に改めてお礼を申し上げます。
デザイナーと周囲の連携をより良く続けるために
横断的な連携の歯車が噛み合っていく中で、新たな課題も見えてきました。
ここまででご紹介した連携に関するポイントを再掲すると、以下になります。
- PFプロダクトはその機能群だけでUXが完結する事が少ない
- 近年の組織構造は個々のサービスプロダクトへのコミットを高めることを優先にしてきた
- 「PFプロダクトデザイナーとサービス個々のデザイナー」双方の連携は横断的UXの実現に必要
直轄するデザイン部では、「事業立ち上げや大規模プロジェクトでの中核デザイナーをアサインする組織機能」であるため、リソースの有効活用とOJT促進の観点からも意識的に、下記の開発フェーズと個々の成長ステージやキャリア希望を踏まえ担当デザイナーをよく組み替えています。
- 要件定義フェーズ
- 初期開発フェーズ
- 運用/改善フェーズ
これにより、各サービスやプロダクト特有の知識量の差はあれども、あるレベルまでの連携をデザイン部の皆さんは自然にこなしてくれるようになりました。
しかし、先述の大規模開発では日々異なる業務を行なっているデザイナー通しの連携に加え、さらにデザイナー以外の職域のステークホルダーとの意思疎通も必要になります。
これからを見据える上で、普段からコンサルティングに入っている、デザインチーム以外も含めて「ユーザー観点を中心とした意思疎通の共通言語にあたるもの」が必要と考え、UX/UI研修プログラムを作成し社外合同で研修を実施しました。(詳細の経緯/レポートはこちらから)
こちらの研修資料(全113ページ)は公開しておりご覧いただけますので、もし宜しければご活用いただければ幸いです。今年の夏から実施した本研修で紹介したアプローチを導入してくれる動きが各所であり、私自身がコンサルティングさせていただいている社内のデザインチームでもOJTで活用し、直接アドバイスを求めてくれる動きもありたいへん喜ばしいです。
さいごに
現在、DMM.comには100名弱のデザイナーがおり、広義におけるデザインに要求される様々な事柄に向き合っています。全てのデザイナーが同じ事をできるのではなく、「各々の専門性が事業推進の活力となるべく連携できる組織づくり」をこれからもチャレンジして参ります。
もし、DMM.comのデザイナーやデザイン組織にご興味を持っていただけたようでしたら、以下からご連絡いただけますと幸いです。