こんにちは。テクノロジー本部 デザイン部 部長の齊藤 卓真です。
略歴としては、UX/UIのデザインリードとして入社し担当プロダクトを複数兼務する傍ら、他部署のプロダクトについても複数UXアプローチ導入を支援。デザインアプローチを主体とした全社横断のデザイン部門を組成/拡張し、現職となります。
入社後から現在進行形で、グループ内各所から「UXアプローチ導入・デザイナーのマネジメント・組織/評価運用」等々のご相談を多々いただく中で、共通の課題感に対する一つの対策としてINI株式会社様と合同で行ったUX/UI研修をご紹介させていただきます。
なぜ、UX/UI研修を自前で実施したのか?
近年、デザインツールの進化やユーザー視点への注目から、従来のビジュアル制作に止まらないUX/UIづくりに注力する企業が増えています。その結果デザイナーが担う業務範囲は拡大する一方で、弊社でもそれは同様です。
これは「事業/サービスを新たに発足させ、プロダクトを開発し、お客様に届け、様々なステークホルダーで育てていく」この一連の工程の中で、デザイナーと様々な職域のステークホルダーとの間に接点が増え、それぞれの目的や手段を繋げるコミュニケーションがより大切になる事を意味します。
そうした中で、サービスの運営や経営責任者との距離が近い環境であればある程、「ステークホルダーの皆が同じゴールを目指せているのか?」「実施しようとするデザインアプローチの方向性は正しいのか?」等々、改めて考える際に不安になってしまう社内各所のデザイナー、またはデザイナーの上長の方からの相談が特に増えてきました。
そこで詳しくヒアリングしてみると、よく挙がる課題が類似していることに気付きました。
(課題1) 誰に届けるためのデザインなのかわからない
例:デザインに着手する時点で「誰に届けるためのデザインか」が定義されず、作った後に「異なる」と指摘される。または、複数の届けるべき対象に優先順位がないまま検討テーブルに並ぶ事で、誰に届けるかがボヤけたデザインになってしまう。
(課題2) ビジネスモデルに沿った前提条件なのかわからない
例:ビジネス観点と開発観点のロジックの接点が表現できず、前提条件が可視化されないままデザイン作成が進んだ結果、作ったデザインがビジネス要求を満たすか判断できず、さらに客観的根拠が不足している事でステークホルダーが意思決定に困る。
(課題3) 改善する時に立ち戻るべきポイントがわからない
例:積み上げた仮説が間違っていた際に、どこが違いどこが合っていたかを立ち返れない。結果、これまでの全てを否定し作り直す事になり、ナレッジが蓄積されない。
本研修は、これらの検討材料やその仮説精度を上げるためのエビデンスを体系的にUX観点で集約し、職域を跨いだステークホルダー間の連携を促進させることが主な目的となっています。
INI株式会社様との合同研修にした理由
「やさしく、つよい会社を増やそう。」という経営理念でUX・コンサルティングからWeb制作・運用まで、20年の社歴をもつWeb制作、デジタルマーケティングを支援する会社。 |
本研修は、INI株式会社 ( 以下、INI様 ) と合同で実施させていただきました。
理由としては、事業会社 ( 弊社 ) と 専門的支援会社 ( INI様 )では、デザイナーとサービスとの関わり合いが始まるスタート地点に多少の違いはあれども、目指すべきサービス作りにおけるデザインのスタンスが近いため。また、弊社デザイナーにはパートナー企業の皆様まで含めた様々なステークホルダーを理解し、シナジーを積極的に生み出してもらいたかったためです。
本研修内容について、INI株式会社 UX・コンサルティングチーム、執行役員の 御船 晋伍様から、社外観点でのアドバイスを多数頂戴した事で、上記の各課題に対し多角的なケアが盛り込めました。
研修内容.1) 誰に届けるためのデザインなのか定義する
デザインというと特別な仕事や職人技と受け取られる方も多いのですが、広義のデザインとしては「あたりまえ」を機能させるコミュニケーション設計も含まれると考えます。
教材の事例では「UXとUI」が機能するプロセスを「届ける対象(ユーザー)」目線で紐解くことから説明し、「あたりまえの難しさに立ち返る」ことから紹介しています。
また、UXにおいて考慮する「時間の長さ、タイミング、リテラシーの前提」が重要であることについても触れており、UX観点からUIアプローチを設計するための構造的な思考整理についても紹介しています。
研修内容.2) ビジネスモデルに沿った前提条件を可視化する
ユーザー目線を大事にする上でも、ビジネスとして獲得シェアが一定規模必要な点を踏まえ「ターゲットへ各種調査データを組み込みながら変換」するアプローチを紹介しています。
その上で、データの集合体から擬人化をする事でターゲットのイメージを「ステークホルダー間で定着・理解促進されやすい」ペルソナに変換しています。
加えて、現実問題として企業が提供できるシーズとの解離を防ぐ事についても合わせて紹介し、「あるべき論」だけになりすぎず、ビジネスモデルを忘れない実現性との両立を目指した思考プロセスについても解説しています。
研修内容.3) 改善する時に立ち戻るべきポイントと条件を紐付ける
どれだけ準備し挑んだデザインやプロダクト開発でも、積み上げた仮説が間違っている事は珍しくありません。仮に間違っていたと分かった時、どこが違いどこが合っていたかを立ち返ることができない事例を多く耳にしてきました。
そこで、これまでの全てを否定するのではなく、分析し検証して正解を目指す上で地図となりうるユーザー目線での情報集約方法を紹介しています。
具体的には、体験の連なりとして仮説を広く見渡す事を推奨しており、その全体感の中で各所の情報設計やKPI等を紐付ける手法です。この中に、マーケティングや営業側面の業界用語をマッピングする事で、ステークホルダー毎の商習慣とのハブとなれるような要素を実験的に組み込んでいます。
実際の研修では「プロダクト全体のUXを俯瞰するフォーマット」をベースに、両社で複数の業態のサンプルや改善アイデアを持ち寄り紹介しました。
研修の最後では、今回紹介したスキーム及びフォーマット一式を全て導入する事が目的なのではなく、時間やコストが限られていたとしても「どこの考慮が不足しているか?情報が集約できていないのではないか?」ということにいち早く気付き、ケースバイケースで部分的にでも導入するか、頭の整理に使ってもらえるよう解説させていただき、締め括りました。
おわりに
UXがサービス開発やグロースの観点を語る際に、幅広い職域の皆さんとの共通言語となる事を目指した本研修の教材は、合計113ページ全て公開しております。
【 資料リンク|UXとUIから知るプロダクトデザイン研修 】
弊社サービスの開発にご助力いただいている、またはこれからお願い差し上げる業界各社の皆様も、もしよろしければご一読いただけますと幸いです。
本研修は、DMM.comにおけるクリエイター( デザイナー/エンジニア )教育と技術導入を推進する「VPoE室」の協力で実施する事ができました。これからも幅広いステークホルダーの皆様と、共により良いサービス開発のコミュニケーション並びにコラボレーションができるよう、デザイナー教育を推進して参ります。