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アニメ『ブルーピリオド』制作サイドストーリー③:渋谷スクランブル交差点の看板広告で印象に残る「モノトーン」と「ブルー」の意味とは?

アニメ『ブルーピリオド』制作サイドストーリー③:渋谷スクランブル交差点の看板広告で印象に残る「モノトーン」と「ブルー」の意味とは?

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渋谷のスクランブル交差点でDMMの広告を目にしたことはありませんか? 渋谷センター街の入口横、大盛堂書店の上にある看板で、これまでさまざまな広告を展開してきました。
2021年4月28日から掲出しているのは、DMM pictures制作のアニメ『ブルーピリオド』。10月1日からの放送に先駆けて看板を出しています。

『ブルーピリオド』の物語のなかで渋谷が重要な場所になっていることもあり、ちょっとした話題にもなっている今回の看板広告。そのデザインに込めた意味やこだわりについて、担当デザイナーの川崎美波に話を聞きました!

前回の制作サイドストーリー②はこちら↓

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「DMMの制約」と「アニメ制作サイドの要望」を融合しつつ、どこから見ても印象に残る看板に

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ーー渋谷のスクランブル交差点に出ている『ブルーピリオド』の看板広告で、どんな部分を担当したんですか?

川崎:主に「ラフ絵の作成」「キャラクターデザイナーへの指示書の作成」「最終的なデザイン調整」を担当しました。

まず、DMMにおける看板広告の制約を把握したうえで、アニメ宣伝サイドの要望も聞いて、その両方の条件を満たす表情やポーズ、構図などのラフ絵を複数パターン出します。

ラフで方向性が決まったら、「こういう看板にするので、こんな表情で描いてください」といった指示書を作成。それをもとにキャラクターデザイナーに依頼します。

その後、イラスト素材を組み合わせ、最終的に看板のデザインを仕上げていきました。

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ーーDMM側の制約というのは?

川崎:いくつかありまして、まず、看板に入れるDMMのロゴは基本的に白か黒。また、スクランブル交差点の景観になじむようなデザインにすることも前提です。さらに、渋谷の看板は縦長なので、デザインは1人の人物にフォーカスすること。2020年のビートたけしさんを起用した「DMM.make」の看板の成功例などを踏まえ、こうしたフォーマットに落ち着きました。

そのうえで、いちばん意識しなければいけないのは「DMM」の文字を目立たせること。渋谷のスクランブル交差点は現場に来る人だけでなく、テレビなどのメディアを通して見る人も少なくありません。二軸にアプローチができるので、その両方を意識しています。

ーーほかにもこだわったポイントはありますか?

川崎:ロゴだけでなく、全体的なデザインも二軸を意識しました。遠目からでも印象に残るデザインに気を付けつつ、近くで見たときにも迫力を感じてもらえるデザインになるようにこだわっています。『ブルーピリオド』の主人公である矢口八虎が看板のメインモデルなんですが、顔の大きさ、表情、目線や絵の具の飛沫など、真下から見た時にちゃんとキレイに見えるようにこだわりました。

また、DMM側が見せたい要素とアニメ側が見せたい要素、どちらも上手くマッチしてデザインへ落とし込むようにこだわりましたし、そこは苦労したポイントですね。

 

「対照的な表情」や「特別な青」を使うことで『ブルーピリオド』の魅力を表現

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ーー確かに、遠目から見てもインパクトが強いですし、近くで見るとより迫力を感じますよね。今回の看板広告は第1弾(4月28日~)と第2弾(8月31日~)の2種類がありますが、表情が大きく変化しているのもポイントですか?

川崎:第1弾では主人公の矢口八虎が少し笑みを浮かべています。これは「絵を描くことの楽しさに目覚めた様子」を表現しています。第2弾は逆に苦しそうな表情ですよね。「好きなことに向き合い続けることの苦しさ、立ち向かって戦っている様子」を表しています。

事前にアニメプロデューサーから「漫画のどのコマのイメージがいいか」を聞いて、そこからラフでいくつかのパターンの表情や構図を提案し、その中から決めました。

ーー同じキャラクターとは思えないほど印象が代わっていて驚きました。印象を変えるために、表情のほかにも工夫してるんですか?

川崎:構図ですね。第1弾はほぼ顔だけで青の絵の具で色を塗った筆跡があるというシンプルな構図です。一方、第2弾は筆を持っている手を入れて実際に描いている感じを伝えました。手を入れるとどうしても顔が小さくなってしまうので、バランスがすごく難しい部分でした。

青い絵の具もまったく同じだと印象が変わらないので、ブラシの幅や絵の具のハネ具合、飛沫の大きさなども少しずつ変化を加えて調整しています。

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ーー青の絵の具をポイントにしているのは、やはり『ブルーピリオド』のキーとなる色だからですか?

川崎:タイトルも作中も「青」がキーとなっていて、主人公の八虎が最初に描いた絵も「青い渋谷」です。なので、今回の看板も「渋谷を青く染めてやろう」と意識しています。これまでの看板広告はモノクロが基本だったので、青を入れても大丈夫なのか確認することからはじめて、相談しながら何とか実現しました。

ーー青が入っているからこそ、パッと見てすぐ『ブルーピリオド』だと分かるデザインだと感じました。

川崎:そう言っていただけるとうれしいです。実物はサイズが大きい分、設置するまでわからないところも多くて、想像しながら進めるしかなかったんです。まったく同じロケーションで検証することはできないので。

しかも、看板専用の紙に印刷するので一般的な印刷物と色の出方が変わったりもします。ここまで色校正を何度もチェックしたのは、今までにない体験でした。

ーー設置してみないとわからないものなんですね。

川崎:遠くから見たときと近くで見たとき、実物を見たときとテレビで見たとき、そうした「印象の違い」も設置してみないとわかりません。昼は自然光でキレイに見えても、夜に照明を当てたら色が飛んでしまって見えないこともあります。

とくに八虎は肌の色が白くて、髪の毛の色素も薄いので、照明の光と色が相殺してしまう懸念もあったんです。正直なところ、色味はけっこう揉めたポイントなので、肌の色のパターンはいくつも色校正を出しました。

 

『ブルーピリオド』で思い出した「モノづくりへの情熱が湧いてくる感覚」

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ーーあそこまで大きな成果物なのに加え、設置するまで実際に見え方がわからないとなると、プレッシャーもかなり大きかったのでは?

川崎:それはそうですね。「日本でいちばん見られる場所」と言っても過言ではない場所の看板広告ですから。しかも『ブルーピリオド』は原作のファンが多く、アニメも注目されていたので、プレッシャーはすごく感じていました。

ーープレッシャーの分だけ、設置された看板を見た時の喜びはひとしおですよね?

川崎:もちろん、大きな達成感はありました。その一方、光の加減を見た時に「こういう感じになるのか……」と思うところも。やっぱり白飛びしてしまう部分もあって、もう少し色を濃く塗っても良かったという反省点もあります。

ただ、DMMの看板広告はモノクロが基本だったので、今回の『ブルーピリオド』で青を使用し、今までにない爽やかな印象を与えることができたのは良かったと思っています。

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川崎美波(かわさき みなみ)
DMM.com エンターテインメント本部 ライツ管理部 デザイナー

 

東京藝術大学出身。2017年、WEBデザイナーとしてDMMに入社。アニメ作品のパッケージデザインを中心に、印刷物やグッズ、キャラクター開発など多岐に渡るデザインを担当している。

 

ーー『ブルーピリオド』ファンの方からの反響も大きかったのでは?

川崎:注目はかなり集められたと思ってます。Twitterなどをエゴサーチしてみたんですが、「場所にマッチしてていいね!」という声が多かったようです。渋谷と関係のある作品ですし、そこは意識した部分だったので、伝わって良かったと思ってます。

ーー私も『ブルーピリオド』もファンなので言わせてください。本当にお疲れ様でした! 希望通り『ブルーピリオド』に関われたことで、影響を受けたことはありませんか?

川崎:「情熱を持ってモノづくりをしなければ」と、ハッと気づいた部分がありました。

『ブルーピリオド』では「つらいけど作りたい」という情熱を抱きながら自分の作品を表現しています。一方、仕事でモノづくりをするとなると、自分の表現ではなく他者からの要望に応じた表現が必要になってきます。それが続くと、モノづくりの情熱を忘れかけてしまうんです。『ブルーピリオド』が「情熱が湧いてくる感覚」を思い出させてくれましたね。

 

渋谷の看板広告のデザインを担当した川崎美波は、『ブルーピリオド』にも登場する東京藝術大学の卒業生。作品との共通点が、今回の仕事にもつながったようです。

制作サイドストーリー④へ続きます↓

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企画/常見真希 構成・編集/平 格彦  取材・執筆/阿部裕華  撮影/高山潤也・馬渕悠人