SEOのレジェンドはなぜDMMに転職を決めたのか?
渡辺さんはSEO業界では「レジェンド」と呼ばれているそうですね。
みなさんが現在当たり前のように使っているGoogleがサービス提供を始めたのが1998年。私が個人事業主としてSEO支援をスタートさせたのが1997年です。自分で言うのもなんですが、SEOという言葉が生まれる前から、かれこれ26年もこの業界に携わっている人間はやっぱり珍しいと思います。
2005年にインターネット広告代理店のアイレップに入社して、2022年の4月からDMMでお世話になっています。
どうしてDMMに転職されたんですか?
前職を退職した当初は「もうSEOの仕事はしなくていいかな」ぐらいに考えていました。ただ、これまで事業会社のSEO担当は一度も経験したことがなかったので、新しい挑戦をする前にちょっと働いてみたい気持ちはあったんです。
そしたらあるとき、転職エージェントから「DMMっていう選択肢はないんですか?」って言われまして。これまでDMMのことなんて考えたことなかったんですよ(笑)。だけどよく考えてみたら、DMMは事業をたくさん持っているし、しかもその事業の幅も広い。
実際に社内の方とも話をしてみたら、各事業部のSEOを横断的に支援するチームがあると教えてもらって、「この会社で働くのもなかなかおもしろそうだぞ」と思えてきたんです。
現在はマーケティング本部のSEO部に所属していて、DMMグループ各事業部の自然検索流入を最大化するためのあらゆる施策に取り組んでいます。
“欲しい情報がすぐに出てこない”不満から始まった
SEOの世界に足を踏み入れたきっかけは何だったんですか?
大学3年生のときです。もともと英語のディベートサークルに所属していたこともあって、資料集めのために、当時普及しつつあったネットは日常的に使いまくっていたんですね。それである日ネットで買い物をしようとしたら、検索結果の100位ぐらいまで見て、ようやく自分の欲しい商品が見つかるという経験をしまして。「最初から上位に表示してくれたらすぐに買えたのに」って思ったときに、もしかしてこれが仕事になるかもしれないと気づいたんです。
早速調べてみたら、アメリカに1人だけ、今で言うSEOの仕事を始めたばかりの人を見つけたんですが、日本では同じことをしている人がいなかった。「じゃあとりあえずこれを仕事としてやってみようかな」と決めたのが1997年の大学4年生のときで、ここから私のSEO人生が始まりました。
いまだに日本ではSEOの本質が理解されていない
実際に渡辺さんが予想した通り、ネット検索に依存した社会になったわけですが、現在のSEO業界の潮流はどうなっているんでしょうか?
研究の一環として、各分野の世界トップ企業のサイト分析をずっと行っているんですが、やはりSEOを推進している企業は共通して経営陣がSEOの重要性を理解しています。企業の経営戦略の中に自然とSEO施策が組み込まれていて、それをもとに人員や予算を割り当てている。Disney、Samsung、GE、Dell、HP、Lenovo……。そういった企業はどこもインハウスのSEO部を持っています。
そういった企業と比べてしまうと、日本のトラディショナルな企業はSEOに対する理解がまだまだ進んでいません。よくわかっていない人が組織の上に立って意思決定を行なっているので、人員も予算も十分に割り当てられていない。マーケティングにおけるSEOの意義や役割を理解できる人間が意思決定をしない限り、この状況は大きく変わらないと思います。
特にSEOのどういったところが理解されていないんですか?
SEO施策の結果が出るまでに時間がかかるということは、いまだになかなか理解されないですね。SEOは広告ではなくてサイトの運用管理です。すぐに結果が出るものでもなければ結果も保証されていません。そもそもSEOは半年から1年かけて成果を出すものです。検索エンジンのアルゴリズムを踏まえて長いスパンで最適化していく必要があります。短期的に成果が出る広告と混同しているケースが多くて、私もこれまで対応にかなり苦労してきました。
欲しい情報を検索しても、あまり関連性のない情報が上位に来ることが多くなった気がします。これってSEOが目指していた本来の形じゃないですよね?
そうですね。SEOを目的化して、ユーザーではなく検索エンジンのためだけに最適化をする企業が多いことが要因のひとつだと考えています。こうした企業は検索結果で1位になれば売上が勝手に上がると考えている傾向があります。
いくら検索結果の上位に表示されようが、求めている情報でなければユーザーは見向きもしないし購入してくれることもありません。
そもそも検索エンジンの上には、情報を探している人と、情報を届けたい人が膨大に存在します。本来のSEOに求められているのは、この両者のあいだの橋渡しをしてあげることなんです。上位表示されることも大事ですが、それ以上にユーザーが置かれている状況、求めている情報を想像したうえで、適切なマッチングになるようSEOを最適化しなければいけません。
DMMのSEOには無限の伸び代がある
これからDMMではどのようなことを実現していくつもりなんですか?
私がDMMに入社して一番驚いたのは、SEOが手付かずの状態だということですね(笑)。ここまでの大きな知名度、規模、売上がある企業ではかなり珍しい。でも逆に言うと、これってSEOの成果がいくらでも伸ばせるということなんです。ざっくりと見積もっただけですが、年間の検索流入を10億は増やせると見込んでいます。
伸び代が無限にあるので、私の腕の見せ所ではあります。ただ、DMMは60以上のさまざまな事業を展開している大きな企業です。理想的なSEO支援体制を築くためには、もっと仲間が欲しいのが正直なところですね。
どういった人を求めているんですか?
長年業界に携わってきた経験を踏まえると、3つの適正ポイントがあると思っています。まず1つ目が、「人間の検索行動」と「検索エンジン」に興味関心が持てること。SEOは高度な分析も行いますが、自社や他社の情報構造や外部リンクをひたすら確認したり、ユーザーの検索行動を把握するために膨大なキーワードを分類するといった単純作業もけっこう多いです。加えて、その作業の先にゴールがあるとも限らない。だから、そもそも検索エンジンの世界が好きでなければ仕事が続かないし、学び続けることもできないのです。
その意味でゲーマー気質の方に向いている仕事とも言えます。最近のゲームはエンドコンテンツを用意していたり細かいやりこみ要素もたくさんあって、飽きない人はずっと飽きないじゃないですか。だから、根っからのゲーム好きの方にはすごく向いていると思います。
2つ目は、世の中のトレンドに興味があること。検索の世界は次々と変化が起こります。検索エンジンのアルゴリズムも変化しますし、検索サービス自体にも新しい機能が追加される。そのたびに自ら調べて対応しなければいけません。その意味で言うと、新しい話題に興味があって、自分で調べたり、試してみようと思える人は適性があります。
そして、最後の3つ目が一番重要なんですけど、インターネットが好きで、日常的にさまざまなサービスをオンラインで利用していること。SEOの成否は、どこまでユーザーの立場や気持ちを想像できるかにかかっています。普段からネットをたくさん利用している人であればそういった機微もよく理解できるはずです。
こんなキャリアの人は特に向いているというのはありますか?
3つの適性を満たしていれば応募時の職種は特に制限はありませんが、例えば広告代理店でSEO業務に携わっている方にはすごく良いキャリアになるでしょうね。DMMは幅広く事業を展開しています。代理店のようにさまざまなビジネスモデルのサイトと向き合いながら施策を推進する経験ができますし、代理店ではアクセスが難しかった細かい社内データを活用しながら真剣に事業貢献に取り組む経験もできます。
SEO業務における代理店の良さと事業会社の良さを持っているのがDMMの良いところです。
それから、ユーザーの行動を分析するという点ではマーケティングの仕事をしている方もSEOの世界で活躍できると思います。
DMMのSEO部はこれから社内の仕組みを整えていくフェーズです。すでに仕組みが完成された環境でぬくぬくと働くより、多くのことが学べるのは間違いない。DMMで働くのは、最高に面白いと思いますよ。
2023年4月26日、六本木オフィスにWeb担当者Forum 初代編集長の安田英久氏をお呼びし、弊社渡辺と勉強会を実施します。
「検索エンジンとチャットAI融合の動きは、SEOの進め方や対策方法に影響を及ぼすのか」「いまSEOのお仕事をしている方々はどんなスキルが求められる?」
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