DMMグループの一番深くておもしろいトコロ。
働く人々

GIGATOON Studioオリジナル作品「オトサツ」が実写ドラマ化! なぜ驚異的なヒットとなったのか

DMMグループの一番深くておもしろいトコロ。

デジタル漫画の制作スタジオ「GIGATOON Studio(ギガトゥーン・スタジオ)」のオリジナル作品『夫を社会的に抹殺する5つの方法』(通称:『オトサツ』)が今年ドラマ化され、話題を呼んだ。2023年1月に放送がスタートすると、初回の見逃し再生回数が翌週には129万回を突破(ビデオリサーチ調べ/23年1月18日時点)。TVerのお気に入り登録数は、同年2月中旬時点で約53万人を超えていた(放映を終えた同年4月時点でも約40万人)。これはGP帯(19時~23時)ドラマに匹敵する数字とも言われており、24時台の深夜ドラマとしては驚異的なヒット作となった。 そんな同作だが、原作となった漫画が配信されたのは2022年10月のこと。そのわずか2カ月後にはドラマの放映がスタートしたという、異例の作品だ。ドラマの放映期間中、漫画はまだ連載中で、原作の完成を待たずしてつくられたドラマであることがわかる。 実はこの背景には、DMM電子書籍事業部による“戦略”が隠されていた。仕掛け人である電子書籍事業部 部長の太田、電子書籍事業部 プロモーショングループ マネージャーの野田に同作ヒットの舞台裏について話を聞いた。

  • 太田淳一郎二次元事業本部 電子書籍事業部長

    前職のラクスル株式会社で事業開発のマネージャーとしてQCD向上、SCM部長、数十億規模の成長事業の事業責任者を担った。その後、2021年にDMM.com入社。COO室に配属され、バックオフィスの改革プロジェクトを担当。その後複数のプラットフォーム事業の戦略立案を行った後、現在は電子書籍事業における事業戦略の立案と実行、マンガコンテンツの制作とIP創出にも携わっている。

  • 野田昌嗣電子書籍事業部 プロモーショングループ マネージャー

    広告代理店でマーケターとしてキャリアをスタートさせたのち、株式会社アイスタイルにて法人営業、広報、コンテンツプロデュース、マーケティングなどに従事。その後2022年にDMM.com入社。電子書籍配信サービス「DMMブックス」のプロモーションおよびキャンペーン設計を担当。広告や販促の枠にとらわれることなく、広くプロモーションを推進。

「夫を社会的に抹殺する5つの方法」の制作背景

ドラマのヒットで話題を呼んだ『オトサツ』は、GIGATOON Studioのオリジナル漫画作品ですが、原作はどのように制作されたのでしょうか。

©テレビ東京 ©アップクロス・三田たたみ/GIGATOON Studio

太田:デジタル漫画制作スタジオ「GIGATOON Studio(ギガトゥーン・スタジオ)」立ち上げの話が出たのが、2021年の10月頃のことです。同時に目玉となるオリジナル作品づくりが始まったのですが、僕たちは「チームライティング」という、かなりチャレンジングな制作方法をとりました。

まずは10人のライターさんに10本ずつ企画を考えてもらい、合計100本の企画から、世間に刺さりそうなポイントを取り出してミックスする。方向性が決まったら、またひとり10本、今度はログラインを書いてもらい、それぞれからポイントを抽出して組み合わせていく。そうやって、個人ではなく総力戦で制作しているイメージですね。

こうして複数の企画を集めては分解する作業を繰り返すことで「30〜40代女性をターゲットにした復讐ものなら共感を得られそう」「『5つの方法』と提示したらわかりやすい」と、ブラッシュアップしていきました。

漫画家の属人性に頼らず、客観的にマーケットで売れるであろう作品を最初から“当てに”いったのです。漫画編集者からすると、かなりイレギュラーな作品のつくり方だったと思います。

漫画の配信より先に決定したドラマ化 

一般的にヒット作をドラマ化するのが定石ですが、まだ話題になっていない作品のドラマ化へはどのような経緯があったのでしょうか。

野田:これもイレギュラーな話だと思うのですが、実は「オトサツ」って配信の2ヶ月前にはドラマ化が決定していたんです。

ちょうどテレビ東京さんが原作となる作品を探していらして、僕らとしては立ち上げたばかりのGIGATOON Studio作品を売り込みたかった。いいタイミングでご縁があり、テレビ東京さんでのドラマ化に至りました。

オトサツ」が選ばれたのは、女性向けのドラマだと反響が大きい傾向があるし、キャッチーかつ強そうなタイトルだから。相談を持ちかけられてから、ドラマ化が決まるまで2〜3週間しかかかりませんでした。DMMならではのスピード感ですね(笑)。

ちなみに漫画はまだ原作シナリオができあがったところで、これから作画に入るぞというタイミングでしたが、絶対にヒットするという半ば確信のようなものがありました。

ドラマの脚本は原作シナリオをベースにしたもので、漫画をもとに書かれたわけではないんですね。

太田:そうです。原作シナリオを完成形だと捉えると、コミカライズとドラマ化が並行して進んでいったという感じですね。ドラマ最終話の時点で、漫画は完結していませんでしたし。

いま思うと、それが良かったのかもしれません。「オトサツ」の場合、ドラマと漫画を切り離してそれぞれが独立した作品としてつくることができたので、ドラマはドラマとして、漫画は漫画としての最適な表現を追求できたのではないかなと思います。 

1万5000人の新規登録者の獲得に成功!

オリジナル漫画が完成していない中でドラマ化するとなると、作品の反響もわからないうちに進行するわけなので、社内でもさまざまな意見があったのでは?

太田:確かに初めての試みではありましたが、そこはDMMの社風に助けられました。

会社の5つの信条「DMM.ESSENCE」の1番目に「本気の失敗を肯定する」という項目があります。なぜやるべきなのかというロジックをはっきりさせて、道筋を立てられるなら、どんな挑戦も会社として応援してくれるってことなんですよ。

野田:そのロジックを成立させるために他社分析をたくさん行いました。

作品をドラマ化する一番の目的は、DMMブックスの新規ユーザーの獲得です。競合他社が過去に放映した漫画原作ドラマの実績や、検索クエリの増減、メディアの露出数を調べたときに、私たちが目標とする新規獲得ユーザー数を満たせると確信しましたし、知名度が低い漫画原作のドラマ作品でも跳ねる可能性があることも確認できたので「オトサツ」も絶対に当たると、社内で説明しました。

新規ユーザーの獲得が目的とおっしゃいましたが、漫画作品のドラマ化がどのような役割を果たすと考えたのでしょうか。

太田: 「オトサツ」は、ドラマ放映時点ではDMMブックスでしか配信していません。ドラマを見てその原作となった漫画を読みたくなったお客さんは、絶対にDMMブックスにやってきてくれるんですよ。

「オトサツ」が放送された結果、DMMブックスの新規登録者数を1万5000人ほど増やすことができました。新規獲得のための入り口という意味では、超大成功だったと言えます。

もともとDMMの課題に新規獲得チャネルの拡大がありましたが、今回のチャレンジによって、ドラマ化というひとつの新しいチャネルができあがったと捉えています。

“オトサツ”という4文字、切り抜き動画の活用

もともと“当て”にいく作品づくりをしたということですが、ドラマの放映に際してPR戦略についてはどのような手法をとったのですか?

野田:DMMブックスのサイト内での宣伝はもちろん、メインキャストが書影と同じポーズをとったメインビジュアルの露出を各所で行い、インフルエンサーとタイアップして漫画の紹介も行いました。

同時にユーザーがどんな単語を組み合わせて検索しているか調べるサーチクエリや、SNSのマーケは強く意識しましたね。「オトサツ」のターゲット層である30〜40代女性は、特にTwitterやInstagramを多く活用する傾向があったのでTwitterでの反応を特に注視しました。 
しかも『夫を社会的に抹殺する5つの方法』って、キャッチーさはあるけれどタイトルが長い。長いと名前を覚えてもらいにくいので、分かりやすい略称が必要だったわけですが「オトサツ」という4文字にたどり着くまで、すごく悩みましたね……。

また、最も力を入れたのは、切り抜き動画です。シーンの切り抜き動画が出回るドラマって、すごくヒットするんですよ。「オトサツ」も主人公の夫が妻を恫喝しているシーンが「むかつく」という共感を得て、多く再生されました。

テレビ東京さんもその点を意識してくれていて、ドラマ制作中に切り抜き用のシーンをわざわざ撮影したり、ドラマの公式TikTokアカウントをつくって、切り抜きを流してくれたりしたんです。

太田:出演した俳優さんや主題歌を歌ってくれた歌手さんが、自主的に発信してくださったのも嬉しかったですね。

とはいえ僕らの一番のミッションは、いかにおもしろい内容の原作を提供できるか。ドラマ化はアンコントローラブルな世界ではありますが、タイトルの良さ、ひとつ一つのシーンのおもしろさ、キャスティングの良さが複合的に組み合わさってヒットしたのかなと思います。

©テレビ東京

ほかにも新たな気づきはありましたか?

太田:テレビを使ったプロモーションは、テレビCMに限らないとわかったことが大きかったですね。今回ドラマそのものがプロモーションとして機能することが証明できましたし、事実として新規顧客の獲得に大きな効果があったので、今後もチャンスがあれば挑戦してみたいと思っています。

野田:DMMの新規ユーザーを増やすという目的に対して、たまたまドラマ化という機会をいただけたわけですが、長い承認フローや横槍を入れてくる上司もなく、チャンスをものにできたことはとてもよかったです。自由度の高いチャレンジをスピーディに決断してやらせてもらえる環境は、DMMならではなんじゃないかと思います。

  • 電子書籍
  • DMMブックス
  • マーケティング
  • プロモーション

シェア

一緒に働く仲間を募集しています!

関連する記事

関連する求人